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身の丈しごと研究室 #11 『ニーズから 身の丈を生かし合う関係へ』

この記事はさとびごころVOL.50 2022 summerよりの転載となります。内容は掲載当時のものです。

 「身の丈起業」、「身の丈しごと」などの取り組みを地味~に行っております。身の丈しごとにおいて、自分の「したいこと(究極には理念)」に対し、「できること」にも着目する話を前回しました。今回は別の視点、「求められること」です。「したくてできること」も、求められていなければ、それは趣味ですからね(趣味も大事ですけど)。

 「求められること」は、簡単に言えば、他者の「したいけどできないこと」です。他者とは、個人以外に社会、或いは動植物や未来の人々の場合もあります。また、「したい」も目的・姿勢・願望・構想と区別する

必要が本当はありますが、詳細は別の機会に。つまり、しごとが生まれるのは、自分の「したくてできること」と他者の「したいけどできないこと」の重なりから、というわけです。

 今回は、自分と他者の「したい」が互いの本心から発していれば、その重なりから強い絆が生まれ、身の丈を精一杯生かし合う関係になる(かもしれない)話を、『エンデュアランス号漂流』というノンフィクションから取り上げてみたいと思います。これは世界一有名な求人広告を出した人の話でもあります。ちなみに求人の場合は、自分の「したいけどできないこと」と他者の「したくてできること」の重なりになります。

 二十世紀初頭、英国探検家アーネスト・シャクルトンは、人類初の南極大陸横断に強い情熱を燃やしていました。資金集めには苦労するも、乗員集めは求人広告の効果もあり順調でした。

 「求む男子! 至難の旅。僅かな報酬。極寒。暗黒の長い日々。絶えざる危険。生還の保証なし。成功の暁には名誉と賞賛を得る。」

 現代では何もかも法令違反ですが(苦笑)、この広告に五千人以上の応募があり、心意気ある二七名が選ばれます。しかして彼らに本当に危険が襲います。なんと途中で船が沈没し、全員が氷上に投げ出されてしまうのです。無線もヘリもない時代。救助が全く期待できない彼らは自力で生還を目指します。そして一年九ヶ月の漂流生活の末、ついに二八名全員が生還を果たしたのです! 全員というところに、彼らの絆の深さと、互いに身の丈を精一杯生かし合う姿勢が感じられます。感動!

さとびごころVOL.50 2022 summer 掲載

戸上昭司(とがみしょうじ)

NPO法人起業支援ネットほか(多足の草鞋)

1973年大阪身の丈しごと研究室 #14 身の丈起業のプロセスを読み解く(下)生まれ。神戸、名古屋、福島、釜石と渡り歩き、2015年に奈良に落ち着きました。「理念」と「身の丈」を両軸に、仕事起こし、自分起こし、地域起こしのお手伝いをしています。

さとびごころ連載

戸上昭司

身の丈しごと研究室

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