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身の丈しごと研究室 #04 身の丈起業の支援のしごとを継ぐ 

この記事はさとびごころVOL.43 2020 autumnよりの転載となります。内容は掲載当時のものです。

 大阪生まれの私は、約20年前に名古屋で「未熟な起業」を成し、志ある人々の黒子役として生計を立てていました。東日本大震災により福島へ移り住んだ私は、身の丈の達人たちと出会います。しかしこの時はまだ、「身の丈」について強く意識していたわけではなかったのです。

 被災地でも、現地の志ある人々を助けることを私は使命にしていました。ところがそこに魔物が襲来します。助成金バブルです。本来ありがたいはずですが、起業需要をはるかに上回る額に、支援者は皆、ノルマ達成に振り回されました。その結果起こったことは、起業の心構えができてない人を無理やり起業させるという事態でした。私もその一端に手を貸す羽目になり、後悔の念が残りました。本当の起業のあり方を被災地に伝えたい。

 当時名古屋では、私も学んだ起業スタイルを伝える「起業の学校」が10年目を迎えており、関戸美恵子氏が校長を務めていました。彼女の起業支援の歴史は古く、約30年前から。当時は起業といえばベンチャーが中心。暮らしから気づく小さな事業を考える人に対しては、「それ、儲かるの?」と冷ややかな対応ばかり。そんな時代を背景に、小さな事業のための独自の起業スタイルを確立させていった人です。そんな女傑と私は、度々仕事を一緒にし、「私の甥っ子」と人に紹介されるくらい気にかけてもらいました。

 2014年秋、被災地から久々に名古屋に戻った私は、彼女に「起業の学校を福島で」とダメ元で相談したところ、即答でOK。「あなたが講師をするならやりましょう」と。(いや、講師やったことないけど)という私の戸惑いが顧みられる暇もなく企画は進み、ついに2015年春、起業の学校・福島キャンパスが開校しました(ちなみにこの頃、私は福島から奈良に移住しています)。慣れない講師業を、想いだけでやり切り、いよいよ第1期卒業生を輩出する10月、関戸氏が他界します。本当に急すぎる死でした。

 来年どうするか。スタッフで話し合いの中から出てきたのが、関戸氏が一貫して「身の丈の起業」を支援してきたことと、それを必要とする人が世の中にまだまだいること。私が、身の丈起業の支援をするしごとを継ぐことを、静かに覚悟した瞬間でした。

さとびごころVOL.43 2020 autumn 掲載

戸上昭司(とがみしょうじ)

NPO法人起業支援ネットほか(多足の草鞋)

1973年大阪身の丈しごと研究室 #14 身の丈起業のプロセスを読み解く(下)生まれ。神戸、名古屋、福島、釜石と渡り歩き、2015年に奈良に落ち着きました。「理念」と「身の丈」を両軸に、仕事起こし、自分起こし、地域起こしのお手伝いをしています。

さとびごころ連載

戸上昭司

身の丈しごと研究室

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