さとびごころ
vol.54 2023 summer
奈良でじわじわ大地の再生
奈良は大都会に比べると自然が多く残っており、この環境が壊れているなどという感覚を持っている人は少ないかもしれない。しかし、都市化によってアスファルトやコンクリートで固められている場所が多く、実はそれが大地の水や空気の通りを遮断している。それに気づくことなく「泥がつかず、汚れなくていい」「都会的で整っている」と肯定的に考えられている。
ただちに影響がわかりづらいこのような大地の呼吸不全は、よもやそれと関係があるとは知られないうちに樹木の元気を失わせていたり、根を暴れさせたり、不要な水たまりを作ったりする。一見したところ問題なさそうなのに、実は調和が蝕まれているという現象は、人の体になぞらえてみるといいだろう。病気ではないが常に疲れやすいなどがそれだ。体調が万全ならば、本来のパフォーマンスを発揮できるはず。環境も同じ。
それでも、絶望する必要はない。そう気づかせてくれるのが「再生」というキーワード。大地の自然治癒力を増すために、人間の力が求められている。
ガーデニングから公共工事まで、広い概念を包摂している環境再生。すでに実践者の著による書籍(P14 参照)もあり、各地で講師によるワークショップが開催されているので、本格的に学びたい人にはそれらを勧めたい。ここでは、奈良で始まっている再生の事例や、移植ゴテひとつから可能な再生術を中心に紹介し、そこから土砂災害等にまで思考を広げていけるお手伝いをしてみようと思う。「植物がイキイキしたら嬉しい」「すがすがしい空間にしたい」「なぜ再生するのかを理解したい」「再生する方法を知りたい」、そんな人たちにとってのヒントになれば幸いだ。
※環境再生にはさまざまな表現がありますが、この特集では、取材協力・監修の西尾さんが学んだ「大地の再生」
の手法をもとに制作しています。
Contents
目次
04 特集 奈良でじわじわ大地の再生
監修 取材協力 西尾和隆 (大地の再生士) 文 編集部
06 再生事例1 MINORI 工房(綴喜郡井手町)
07 再生事例2 水内邸(吉野郡吉野町)
08 再生事例3 報恩寺(宇陀市大宇陀)
09 再生事例4 松原邸(宇陀市大西)
10 再生事例5 鳥見山公園(宇陀市榛原)
11 the others その他の再生事例
12 ポイントは水や空気の流れ
13 誰でもできるちいさな再生 よく使われる言葉と意味
14 なぜ枝や竹、落ち葉、炭なのか
連載
02 《 PHOTO ESSAY これからの、これから》No.16 給食中はまかせろ。 by 都甲ユウタ(フォトグラファー)
15 《森のねんどギャラリー 》 vol.7 お面 岡本みちやす
16 《風は奈良から〜さとびごころ×七つの風》 #12 歩く奈良ツアーで宝を探そう GUEST 岡下浩二さん(合同会社ちとせなら) HOST 三浦雅之・阿南セイコ
20 《杉さんの里山再生録》#03 里山の産業「かつて」と「これから」 杉浦英二
22 新連載 《となりのフォレスター》 No.1 五條市 寄稿/ 梶谷真秀
23 《はじめてのヴィーガン》 No.2 カフェ&ギャラリー「轉害坊」 井上和恵
24 《GOMIGEN 最前線》#19 人工芝から大量のプラスチック 北井 弘
SATOBI COLUMN・お知らせ
18 SATOBICO WORKSHOP REPORT 季節の雑草キッチン
25 若手部員のさとび的体験録 特集連動版 藤井健太
26 身の丈しごと研究室 #15 戸上昭司 | さとび的読書さんぽ 嶋田貴子
27 編集後記・さとびごころお取り扱いスポット など
「十四代目林業家 ドタバタイノベーション奮闘記」、「山と今日から始まる物語」はお休みです。