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身の丈しごと研究室 #02 主役になってはいけない? 

この記事はさとびごころVOL.41 2020 springよりの転載となります。内容は掲載当時のものです。

 「身の丈起業」、「身の丈しごと」などの取り組みを地味~に行っております。この連載では、私自身が身の丈しごとに至る話をご紹介しようと思います。

 前回書いたように「未熟な起業」を成した私は、「コトの支援」をしごとにしていきます。元々は、大学院で地球46億年の環境変動史を扱っていたこともあり、未来の地球環境に関心がありましたが、科学的に環境問題に関わることに限界を感じていました。まちづくり、農山村、福祉、教育、経済など多分野に関心を広げるも、自分が何をしたら良いのかは分からなくなるばかり。

 そんなある日、閃いたんです。「各分野には既に先駆者がいるが、順調かというとそうでもなく、前線にいるが故の悩みや困難を抱えている。彼らの手助けに駆けずり回ることならできるのでは」と。こうして、持続可能な社会の実現を目指して「コト」を起こそうとする人と一緒になって挑戦する日々が、私の起業後の日常となりました。

 起業から約5 年が経った頃、農山村の暮らしを知らずに持続可能な社会は語れないと思い、私は農山村中心の活動をしていました(この時分、大企業管理職を前に講演し「いったい日本に農山村は必要なのですか?」と質問を受け愕然とした話はまた機会があれば書いてみたいです)。

 このころの私は今後のしごとの方向性に悩んでもいました。このまま黒子のように起業家や活動家の支援を続けていくことで良いのか、他にやれることがあるのではないのか。当時私は、農山村での暮らしを学ぶ塾の事務局もしていて、その分野では大御所とも言える澁澤寿一氏(NPO 法人樹木環境ネットワーク協会)に月一でお会いできる幸運を得ていました。ある時、氏にその悩みを相談してみたのです。返ってきた答えは、「君は主役になってはいけない」でした。

 「君は主役になるのがしごとではなく、主役を支えるのがしごと」。理由はよく分かりませんが、妙な説得力があり、自分でも薄々感じていたこともあり、すんなり受け入れることができました。また「このままでいいんだ」との自信も持てました。後で知ることになるのですが、この言葉は、民俗学者の宮本常一氏が、師である澁澤敬三氏から送られた言葉と同じなのだそうです。この言葉は、今でも私の芯に浸み込んでいます。

さとびごころVOL.41 2020 spring 掲載

戸上昭司(とがみしょうじ)

NPO法人起業支援ネットほか(多足の草鞋)

1973年大阪身の丈しごと研究室 #14 身の丈起業のプロセスを読み解く(下)生まれ。神戸、名古屋、福島、釜石と渡り歩き、2015年に奈良に落ち着きました。「理念」と「身の丈」を両軸に、仕事起こし、自分起こし、地域起こしのお手伝いをしています。

さとびごころ連載

戸上昭司

身の丈しごと研究室

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