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身の丈しごと研究室 #03 身の丈の暮らしを極めんとする人との出会い 

この記事はさとびごころVOL.42 2020 summerよりの転載となります。内容は掲載当時のものです。

 「身の丈起業」、「身の丈しごと」などの取り組みを地味~に行っております。この連載では、私自身が身の丈しごとに至る話をご紹介しようと思います。

 「未熟な起業」を成した私は、持続可能な社会の実現を志す主役たちを支える黒子役をしていました。周囲の助けを得ながら、なんとか生計を立てていた2011 年、東日本大震災が、私の人生をまた大きく動かしました。私が主にご縁を得たのは福島で、移住してまで活動に取り組んでいました。迷いと無力感と憤りに、希望がごちゃ混ぜになった不思議な経験でした。語りたい話は数多ありますが、ここでは印象的な2 つの出会いをご紹介します。

 私が福島に関わったきっかけは、原発事故の影響で全村避難となる飯舘村に住んでいた友人を心配して訪ねたことでした。ある時、その友人の頼みで、福島に講演に来た緒方正人氏という元・水俣病原告団のリーダーで、当時は(おそらく今も)漁師としか名乗らない方を飯舘村に案内したのです。

 その時の緒方氏の言葉は、復興支援のみならず、人生そのものに指針を与えてくれるものでした。「苦しんでいるのは人だけではありません。土地そのものも苦しんでいます。」「国には2 つあります。制度国家としての『日本国』と、自分が生まれて還る場所である『生国』としての国です。」「生国とは、自分の身体の延長線上にあると感じられる範囲のことです。」生国とは身の丈のことではないか…、そんなことを後に考えるようになりました。

 もう一人は、私が活動拠点を置いた『蓮れん笑しょうあん庵』の主人・渡辺仁子氏。蓮笑庵は、仁子さんの夫で故人の民画家・渡辺俊明氏が、絵を描くように山裾に建物を設計し建てた、暮らしと美が共存する場所で、人間社会における物心両面の喧騒から隔絶された、何とも安心感に包まれた場所なのです。ここでの暮らしから学んだことを一言で言えば「日々、丁寧に暮らす」ということ。ここは、身の丈の暮らしと美が最高度に調和されたような場所でした。

 原発事故という人類の身の丈を超えた事象に対峙していた福島の人々と活動を共にすることは、逆に身の丈の暮らしを極めんとする人や地に出会っていく過程でもありました。

さとびごころVOL.42 2020 summer 掲載

戸上昭司(とがみしょうじ)

NPO法人起業支援ネットほか(多足の草鞋)

1973年大阪身の丈しごと研究室 #14 身の丈起業のプロセスを読み解く(下)生まれ。神戸、名古屋、福島、釜石と渡り歩き、2015年に奈良に落ち着きました。「理念」と「身の丈」を両軸に、仕事起こし、自分起こし、地域起こしのお手伝いをしています。

さとびごころ連載

戸上昭司

身の丈しごと研究室

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