この記事はさとびごころVOL.48 2022 winterよりの転載となります。内容は掲載当時のものです。
4歳で発達障害の診断をもらい、小学校3年生を楽しんだり苦しんだりしているらしい息子へ。
立て続けにすぐ嘘だとバレるであろう「ごまかし」をするようになってきた。それって○○だからおかしくない?どうしてウソをついたの?と聞いたとたん「正直にいうとさ…ウソが止まらないんだよう!」と泣き出した。その泣き顔から、あぁ本気で苦しいんだということが読み取れた。
ここでぼくには選択肢が二つあった。1ウソは悪いことだと叱る。2不安からウソをつくことが多いので、まずは褒めて不安を取りのぞく。2は発達障害をネットで調べればすぐにでてくる情報だ。ぼくが息子にかけた言葉は「バレるウソはつくな。もっと上手につけよ」だった。彼の表情から、まったく響いていないことが読み取れた。それからの息子のウソは巧妙になり、あとで裏付けを取ったり、第三者からの指摘でウソに気づいたりと、本当かどうかわからなくなってきた。ついには親と子、両者に妙な口癖ができてきた。親「ウソじゃないよね?」息子「これは本当なんやけどさ」うーんよくない。息子もウソをつく苦しさを乗り越え饒舌だ。そもそもウソをつく理由は明確で「失敗を隠したい」これに尽きる。もう発達障害かどうかは関係ない気がする。ウソってだいたいそんな理由だし、そのウソがずっとバレないこともあまりない。
息子と向き合い真剣に伝えた。「イトが失敗したことに怒ることはこの先もない。うっかりミスも忘れ物も、パパもいまだにしてる。だから、忘れたのに、ミスしたのにそれをしてないって言うな。ごまかしたりウソついたことがわかったら怒る。言ってる意味わかる?」「う…話が長いよう」えらい。この正直者!
さて、ぼくが中学校も卒業間近、教室の壁に各自の直近の目標が書かれた紙が貼り出された。多くが高校合格!受験勉強に頑張る!そんな感じ。ぼくの目標は「忘れ物をしない」だった。その後写真撮影を仕事にしたぼくに重くのしかかる目標となったのだ。
さとびごころVOL.48 2022 winter掲載
文・都甲ユウタ(フォトグラファー)