この記事はさとびごころVOL.25 2016 springよりの転載となります。内容は掲載当時のものです。
なんとなく不調を感じるとき、薬や病院に頼る前に、自然の力や自然治癒力により安らぎや楽しさをもたらしながら癒すホームセラピーを提唱されているクレメンツかおりさんに、誰もが取り入れやすい自然療法について紹介していただきます。
里山は黄色いサンシュウ、鮮やかなピンク色の桃の花などに彩られ、山から里に降りるに連れてソメイヨシノがだんだんと薄桃色に咲き誇る、美しい季節になりました。野畑では、菜の花や野すみれ、そして春の薬草たちが今年も力強く土の中から芽吹いてきました。一月の七草粥でいただく頃はまだ赤ちゃんのようだったハコベやナズナも、大きく育ち花をつけ始めました。ハコベはニワトリの餌として昔から使われていますが、ビタミン、ミネラルが豊富な薬草です。
日本の薬草はもともと、薬がない時代に体調を崩したときや、季節の変わり目に調子を整える目的でお茶にして飲んだり、食事の中でいただいたりしてきました。それぞれの旬にその植物が適した場所で生まれ育った薬草は、人間が主導権を握って育てる植物と違い、神様からの贈り物だと思います。
薬効成分を分析し、その薬効を取り入れるメディカル的考えは自然療法の中でも必要です。でも、自然の薬草には薬効成分とは別に生きたエネルギーを感じます。昔の人たちは、春になったら庭に生えてきた薬草たちを摘んで戴いたり、裏山に出てきた山菜やきのこを戴いたりして自然と体調を整えていたのですね。
ドイツでも春季療法といい、ネトル(西洋イラクサ)を春先にスープやお茶として飲むことでアレルギーの緩和や体質改善に役立てる習慣がありますが、残念なことに日本ではそんな薬草を取り入れる習慣が少なくなってきているように思います。一つは核家族化により、多世代が一緒に生活することが少なくなったことで、おばあちゃんの知恵袋が伝えられなくなったこと。もう一つは薬草が育つ環境が少なくなったこと。
多くの薬草は日当たりが良すぎる場所より、適度に日差しが遮られ周囲に有機的な物があることを好みます。竹やぶや落葉樹があると適度な日かげと、落ち葉や木の皮などの有機成分が薬草にとっての自然な肥料となります。
人の手が過度に加えられることで、薬草にとっての住みやすい場所が破壊されてしまいます。荒れた土地、山、それを整備することも森にとっては大切なことですが、そのやり方のいかんで薬草が育たない土地になってしまう。何事もバランスが大切ですね。
【クレメンツかおり】
1984 年フランスでアロマテラピーに出合ったことをきっかけに、色彩心理療法、気功療法、クリスタルヒーリング、フィトテラピーなど様々な自然療法を学ぶ。自然療法士(ナチュロパス)養成校” 自然療法森の学校” では、アロマテラピーを中心に、薬膳療法、鉱物療法、日本の薬草療法などのセミナーも開講。
さとびごころVOL.25 2016 spring掲載