さとび冬号の発送準備のかたわら、前から楽しみにしていた予定のため明日香村へ行ってきました。さとびの特集でも度々お世話になってきている佐藤浩行さん(日本近自然学研究所代表)が主催・講師をされる「近自然学セミナー」の第1回目が開催されたから(会場:森ある暮らしラボ)。
近自然学ということばは、あなんと親しい人であれば「また言うてる」レベルかもしれませんが、多くの人にとっては耳慣れない言葉かもしれません。スイスの考え方に学ぶ体系的な知識なのですが、きちんとした定義は講師の佐藤さんに譲ることにしまして、あえて簡単に言ってしまいますと、案外日本が古来から持ち続けてきた自然との調和に通じるものです(あなんが縄文人やちょっと昔の日本人から学んだ「獲り尽くさない」という考え方も出てきます)。
ただ、戦後の日本人はどんどん忘れてきているため、今あらためて学んでみることに価値があります。すると言語化ができて、自分の中に定着させることができ、「あれも、これも、そうだった」という発見があり、これからどんなふうに自然に近づいていこうかなあというイメージが湧いてくるような、そんなセミナーです。
過去の投稿と重複しますが、あなんが最初に「近自然」という言葉と出会ったのは、おじさんになった長男がまだ幼い頃、1990年代のことでした。日本の景気はまだよくて、あちこちで巨大なダムやゴルフ場やリゾード開発がさかんでした。最初は気がついていなかったのですが、だんだんと「このままでは自然を壊し続け、そこに住む生きものや人里が消滅する。それって、ほんとうにいいんだろうか」という強い疑問が生まれ、かといって答えもなく、しょんぼりするしかなかったところに、出会ったのです。
自然も人間も両立して豊かになる道はある
それは人間が自然に近づくことによって可能になる
人間は自然を作ることはできない
人間にできることは自然に倣い、近づくこと。
それによって、生態系のトップにいる人間に持続的な恩恵がもたらされる。
そう教えてくださったのは、当時「近自然川づくり」を提唱されていた福留修文(故人)先生でした。これを川づくりだけの話にとどめずに、ものの考え方のベースに持てば世の中がよくなる!と思ったわたしは当時の近自然仲間と協力して福留先生を奈良にお招きしたり、高知にいらっしゃる先生のところへ仲間と押しかけて(それはまさに押しかけでありました。すいません)現地セミナーを開いていただいたり、各地で講演されるのを追いかけて聞きにいったり。近自然とは何か?を知るのに夢中でした。
どうやら、この時期、ちょっとした近自然ブームだったそうです(自分がそのブームの中にいた自覚はなかったですが)。河川法の法律も変わり、多自然型川づくりが基本方針とされています。でも、実装するとなるとなかなか、近自然らしい川の事例を見ることは少なく、「やっぱり無理なのかなあ」と思ったのでした。ごめんなさい。わたしは、いったん失望しました。
しかし福留先生はずっと活動されていました。そして2012年、訃報を知りました。わたしの中で、何かカチっと音がしました。その後、2014年ごろだったでしょうか「近自然森づくり」を提唱している人がいることを知って驚くことになるのです。それが佐藤さんでした。(ちなみにその後、福留先生のお弟子さんで、近自然河川研究所の有川さんとも出会う幸運に恵まれ、執筆(さとびvol.58・9P)をお願いしたことがあります。さとびは隠れ近自然マガジンです)近自然という言葉遣いでなくてもいい、自然に近づくことの価値を伝えるものをつくりたい。それがさとびを作る原動力になっています。今も変わりません。やっていいことと悪いことの判断基準のひとつにもなっています。それは自然にやさしいか。それは人にもやさしいか。
わたしの理解と佐藤さんの理解が100%重なるわけではないかもしれません。わたしが生活者目線であるのに対して、佐藤さんは森林管理のプロであり、専門分野になると素人ではついていけないところも含まれています(勉強せいや。はい、情報はおさえていますし、ブックも作りました。そうなんですけど森林管理の現場の人でなければ身につかないことがあります。それをわたしがわかったようなことは言えないのです)。
河川工学についても同じく、わたしには専門外の外もいいところ。でもね、美しい川、美しい森は万人にとっての共通言語です。森や川が作る風景。なぜ美しい風景は美しいのか。人の手が全く触れずにきた場所は、この日本列島の中では多くありません。そこには適切な人間の介入があり、自然と調和する形で守られてきた賜物なのです。例えば、田んぼの風景がそうだと思います。田んぼは人間の都合で自然を改変して作られた風景ですが、多様な生物が生息するビオトープのような場所です(昔のような自然栽培ではなくなり、農薬が使われている現実は受け入れないといけませんが、それでも環境への貢献度は高いと思いますし、ソールフードお米を生み出す現場、自然も人も豊かになれる場所。さとびのまわりでは自然によりそう農業に取り組む人が多くいらっしゃいます。)。
みなさん、おしゃれって好きですか。誰だって、おしゃれで美しいものが大好きなはずです。自然ほど美しいものがあるでしょうか。人間の豊かさや便利さを我慢せずに、その美しさに囲まれて暮らせるということはなんと豊かなことでしょうか。
近自然学を知ることが、自然にも人にもやさしくありたい方にとって役にたつのではないかと思います。興味をもっていただけましたら、2月以降に行われる講座へお申し込みになってはいかがでしょうか。2月は残席が少ないようですが、もし満席でも相談されると入れるかもしれませんし、今後も継続して行われるようです。入門編なので、どなたでも無理なく吸収できます。美しい事例写真も見れますよ。
あなんは今後もしあれば、農業や街づくりへの応用について、もっと知ってみたいなあ。
森ある暮らしラボの最寄りのバス停、岡寺前の美しい街並み
また、これはまだあなんの個人的な案ですが、奈良市近郊にお住まいの方で5人くらい集まっていただけたら佐藤さんを(奈良市内に)お招きして勉強会を開催してもいいと思っています。参加してみたい方は、コンタクトフォームからご相談ください。
2月以降の近自然学セミナー入門編
●日本近自然学研究所主催
2月の近自然学セミナー入門編
第2回 2026/2/7(土)明日香村【募集中:残り2席】
https://20260207.peatix.com
第3回 2026/4上旬 明日香村【予定】
※受講料 3,000円(学割あり)※内容はいずれも同じです
佐藤さんに「いつまでも豊かな森ってなんでしょう?」と問いかけて執筆していただいた特集
さとびごころ vol.47 (2021.autumn)
特集 いつまでも豊かな森