この記事はさとびごころVOL.50 2022 summerよりの転載となります。内容は掲載当時のものです。
4歳で発達障害の診断をもらい、小学校4年生を楽しむ息子へ。
この文章を書きながら悩んでいる。息子に発達障害というものを説明し、君の脳はこういう状態だと伝えること。そしてこのエッセイの存在を君に教えることにだ。いや、伝えるか否かで悩んでいるのではなく、いつ伝えるのかを見極めたい、と考えている。
息子の頭の中は現在ポケモンが占領していて、わずかな隙間に「野球と今日の夜ご飯は何か」がギリギリ滑り込んでいる状態なので、伝わらないことは見事に見極めた。
そもそもこのエッセイは「我が子が発達障害である」と、決して少なくない他人に向けて、息子の許可なく書いている。その目的は二つある。
一つは、息子に伝えるときに、このエッセイがわかりやすいツールになると考えたからだ。症状の説明だけでなく、日々のずっこけエピソードを記録して、そのときの親子のやりとりや心境を思い出として前向きに伝えられたら。
二つめは、読者を息子の味方にしたいということ。息子と関わるかもしれない人たちが、障害を責めるのではなく対処する方向に向かってほしい。そして最大限の希望を言えば、味方になってほしいということだ。
我ながら楽観的な、物事は善い方向に収束すると信じ込んだ目的設定だが、もしかすると息子から「書いてほしくなかった」と言われる悲観的未来もある。それは想像できたし悩みもした。それでもぼくは、幼い君の了承よりも君の成長と同時進行であることにこだわり、味方づくりをすることを優先した。それは突然の診断で戸惑う、ぼく自身の味方づくりでもあったんだと思う。日々起こる出来事を記録して、ぼくはこんなふうに思ったと、エッセイにして発表する。読んでくれた人のポジティブな反応は、自己承認欲求とは少し違う、次々と仲間が増えていくような安心感をくれた。
ポケモンと同じくらい頼もしい味方をゲットするためにも書き続けることを、君に認めてもらおう。
さとびごころVOL.50 2022 summer掲載
文・都甲ユウタ(フォトグラファー)