この記事はさとびごころVOL.44 2021 winterよりの転載となります。内容は掲載当時のものです。
4歳で発達障害の診断をもらい、小学校2年生になった息子へ。
朝、妻が声をかけるとガバッと起きて「パパ、起きよう。はやく」と声をかけてくる。起きたくないとぐずったこともない。
学校の宿題も習い事もキチッとやる。
(本当に我が子か?)
何で宿題ちゃんとやるの?と聞いてみた。「…ごほうびのため!」と息子。
たまにやってくる誕生日やクリスマスに向けて日課をこなしているそうだ。
息子にとってのごほうびとは物でもあるが、褒めてほしいという欲求がより大きいと感じる。小さな妹が褒められていると「なんでなっちゃんばっかり…」とふてくされている。
そんな彼にピッタリな父親は、僕である。
買い与えることに抵抗はなく、ひたすら褒めることしかしていない。すべて僕が子どもの頃にして欲しかったことばかりだ。
ただ、小さな頃から息子の欲求より先回りして買い与えていたら、満たされたのか、特別な日でもない限り、物をねだってくることがない。つまらん。
そんな息子はさぞストレスフリーなはずだと思っていたが、ある日しつこく喉を鳴らす、まるで相づちを打っているかのような「うん、うん」という声を出していることに気づく。
「どうしたん?喉が気持ち悪いの?」そう尋ねても本人は音を鳴らしている自覚がない。どうやら無意識でやっているようだ。それがストレスに起因する、音声チックという症状だとわかった。四六時中、喉を鳴らす音が聴こえていると、我が子と言えどもイライラしてしまう。だからと言って、それを注意したり止めさせる訳にはいかない。本人は何もしていないのだから。
自分の意思とは別に、声が出たり体の一部が動いてしまうチック症。突然の発症に戸惑ったが、とにかく治そうとせず無視することで、自然に症状は消えていくそうだ。
朝、起きたくないとぐずる父親を起こす日々が、君のストレスだったなら謝ります。
さとびごころVOL.44 2021 winter掲載
文・都甲ユウタ(フォトグラファー)