この記事はさとびごころVOL.49 2022 springよりの転載となります。内容は掲載当時のものです。
寒くて長い冬が去り、ようやく暖かな春がやってきました。東吉野に来て、6年目の春です。
冬の間は、全くと言っていいほど見かけなかったご近所の人々が、暖かくなってくると、もぞもぞと動き出し、畑仕事に精を出し始める。東京では一定のサイクルで暮らしていたけれど、自然の中で暮らしていると、だんだん人間も動物のサイクルに近づいているようで、何だか愛おしさを感じてしまいます。
人生を変えた病気との出会い
2年間続けさせていただいた連載も、今回が最終回となりましたので、私が今に至る経緯を少しお話させていただこうかと思います。
私が玄米菜食の世界に入ったのは、30代で婦人科の病気に罹り、病院に行った時に、投薬治療とその副作用の話に幻滅し、医療に頼らずに何とか自分で治したい、と思ったのがきっかけでした。
本やネットで調べ、婦人科の病気には砂糖と乳製品が良くないと知り、試しに1週間それらを完全に絶ってみると、症状がかなり改善されたのです。
その頃の私は、東京で派遣社員としてパソコンオペレーターの仕事をしており、休憩時間の楽しみにチョコレートを食べるのが日課になっていました。
それから砂糖、動物性食品、添加物を全く取らない完全玄米菜食の生活に切り替えたところ、1年半後には、病気は跡形もなくなっていました。
「食べたものが身体をつくる」というのは本当だ、食べ物の力って凄いな、と強く実感した私は、パソコンの仕事を辞め、マクロビオティックの教室に通ったり、レストランの厨房などで働きながら食のことを学びました。
「食が変わると思考が変わる、思考が変わると行動が変わる、行動が変わると運命が変わる」と言われるように、私の生活は玄米菜食を中心に180 度変化したように思います。
移住したこの地では、人とのご縁から、自分のお店を開くこともできました。今後は、玄米菜食の料理を、家族の健康を管理する主婦やお母さんに作ってもらえるように、料理教室などで教えていく活動などにも力を入れていきたいと思っています。
マクロビオティックの理念
マクロビオティックには基本3原則というものがあります。
1、「身土不二」身体と土(環境)は切り離せない
2、「一物全体」ひとつのものを丸ごと食べる
3、「陰陽調和」陰陽のバランスを知り、調和を保つ
何だか難しそうにも聞こえますが、要するに「玄米と野菜を中心に、その土地でとれたものを、旬の時期に皮をむかずに食べる」ということ。
玄米ごはん、味噌汁、漬物、旬の野菜のおかずをよく噛んで、食べ過ぎないという伝統的な日本人の食生活がお手本なのです。
ヴィーガンやベジタリアンと異なる所は、自分の体調や体質、季節や土地に沿ったものを食べるという点で、私自身、ここ最近は魚や卵も食べたりと柔軟性のある食生活に変化しています。
近くの川で獲れたての鮎やアマゴ、産みたての平飼い有精卵など、都会では手に入らない自然の恵みがここにはあるからです。
また、自分で野菜を作ったり、近くの直売所に行けば、いつでも新鮮な旬の野菜を手に入れることができます。
自分の暮らしの範囲のものを食べることで、身体も健康になり、その土地に根ざすことができるように思います。
・・・ 冬のおすすめ食養レシピ・・・
青菜と揚げの梅おろし添え
(作り方)
1. 青菜は5cm ほどのざく切り、油揚げは短冊切り、しめじは石づきをとり、
小房に分ける、梅干しの種を取り、包丁で叩いて潰す。
2. 大根をおろして、水気を絞ったら、叩いた梅干し、梅酢と和える。
3. 厚手の鍋を火にかけ、油揚げをから炒りして、鍋に油揚げの油を移す。
4. 油揚げをいったん取り出し、しめじを炒める。
5. しんなりしたら、青菜を入れ、軽く炒めてから、昆布出汁を入れ、油
揚げを鍋に戻す。
6. 蓋をして、5 分ほど煮たら、醤油を回し入れ、馴染んだら器に盛る。
7. 青菜の上に梅おろしを添えていただく。
家族について
我が家は夫とふたり、猫2匹の小さい家族で暮らしています。
東京にいた頃は会社員としてWEB デザインの仕事をしていた夫も、この土地に移ってきてから流木や陶土などでものづくりをする造形作家の活動を始めました。
まだまだ駆け出しですが、有難いことに、ギャラリーやお店からお声がけいただけるようになり、個展などで作品を販売して生計を立てられるようになってきました。
また、東京のアパート暮らしでは叶わなかった2匹の猫との暮らしも思っていた以上に楽しく、ただそこにいてくれるだけで心から満たされた気持ちになります。
お互い派遣や会社員をしていた頃の月収からは大分減りましたが、自分のやりたい事をやって好きなように暮らしていけるというのは本当にありがたい事だと思っています。
やはりここ東吉野では、東京に住んでいた時の1ヶ月分の家賃で約1年暮らせるというのが大きいように思います。
また、ご近所さんが採れた野菜を分けてくださったり、近くの友人と色々なものをシェアさせてもらったり、周りの人に助けていただく機会も東京にいる時より、とても増えたと感じています。
自分の置かれた環境や周囲と調和して生きる。
そんなこともマクロビオティックの本質に当てはまるのかもしれません。
2年間おつきあい頂き、本当にありがとうございました。文章を書いて紙面にするというのは初めての体験でしたので、楽しい貴重な機会を与えてくださいました阿南編集長には本当に感謝です。
みなさま、どうぞ今後とも末永く健やかにお過ごしくださいませ。
編集部より:一昨年の夏号から始まったこの連載も二度目の春でお別れです。三瓶歌奈子さん、美しい写真と、日々の食や暮らしを立ち止まって見つめなおせるような文章をありがとうございました。またどこかで!
さとびごころVOL.49 2022 spring掲載
筆者プロフィール さんぺい・かなこ
宇陀市にて穀物菜食の店「菜食ごはん 休日ダイヤ」を運営ののち、2020年4月より食養アドバイザー、ケータリング等の活動をはじめる。
菜食ごはん 休日ダイヤ
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