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種生む花 #06 自給率アップ 三浦雅之&陽子

この記事はさとびごころVOL.39 2019 autumnよりの転載となります。内容は掲載当時のものです。

 

プロジェクト粟の活動拠点であり原点でもある、清澄の里の秋。

 最近、ある知り合いの方との会話の中で、こんな話を聞きました。「なあ三浦くん、昔の人は自分の職業に誇りを持っていたと思うんだよ。誇りがあるから自信になった。自信があるから向上心が生まれた。最近はどうなんだろうね」と。

 この話と繋がるのですが、この頃頻繁に頭に浮かぶ言葉が「自給率」です。食料やエネルギーなど、生きていくのに欠かせないものは今、お金で買わなくてはなりません。そしていつの間にか、本来お金と交換するものではなかったもの、例えば、助け合いとか、種とか、あらゆるものを買わなくてはならなくなりました。遊び、価値観や豊かさの意味も、もしかしたらお金と引き換えにして手に入れていることがあるかもしれません。これらは自給率が下がっていると言うことですよね。

 生業にも自給率があるのではないかと思います。伊藤洋志さんの著書『ナリワイを作る』によれば、ナリワイとは、「個人レベルではじめられて、自分の時間と健康をマネーと交換するのでなく、やればやるほど頭と体が鍛えられ、技が身に付く仕事」定義されています。100年前の国勢調査で国民から申告された職業が約3万5000種あったものが、いまでは2167職種(厚生労働省の「日本標準職業分類」による)にまで減っています。職業の多様性は、能力や個性に合わせて様々な働き方と役割を生み、地域内経済を潤しましたが、「働く=就職」と単一化されるにつれて、時間や体力と引き換えにお金を得るようになりました。これがナリワイ自給率の低下と言えると思います。

 逆に言えば、これらの自給率を上げることは、可能なのです。そして、自給率が上がった分だけ、お金で買ったり計ったりしなくてすむようになり、それに代わる体験や実感が生まれ、主体性、自信、誇り、安心感にも繋がって行くでしょう。コミュニティデザイナーの山崎亮さんは、「楽しさの自給率」を提唱されています。そこで資源となるものは地域の豊かな自然です。

 急に何もかもを自給自足しようと言うのではありません。自分にできる最小単位から、自給を始めてみませんか。見返りを期待しない助け合いを自給できればどうでしょう。庭先やベランダで食べられる植物を育ててみるのはどうでしょう。自給率アップは、僕たちが提唱してきた「ちいさな農」にも、通じるものがあると思います 。(聞き書き 阿南セイコ)

さとびごころVOL.39 2019 autumn掲載

文・三浦雅之&陽子

《三浦雅之さんのプロフィール》

1970 年生まれ、奈良市在住、京都府舞鶴市出身。1998 年より奈良県内の在来作物の調査研究、栽培保存に取り組み、大和伝統野菜を中心に年間約 120 種類の野菜とハーブを栽培。 2002年農家レストラン清澄の里「粟」、2009 年粟ならまち店をオープン。2015 年5 月より奈良市との官民協働プロジェクト「cotocoto」を運営。株式会社粟、NPO 法人清澄の村、五ヶ谷営農協議会を連携協働させた六次産業によるソーシャルビジネス「Project 粟」を展開。 株式会社「粟」代表取締役社長 。NPO法人清澄の村理事長 。はじまりの奈良フォーラム プロデューサー 。主な著書に『家族野菜を未来につなぐ』(学芸出版社2013 年)『種から種へつなぐ』( 共著 創森社 2013 年) など。

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