TEtoTEも迫ったある日、販売担当のM部員に電話がかかってきました。大阪にある波屋書房さんからでした。
波屋書房さんを紹介した記事を見つけました
創業大正8年 なんばの料理書専門店『波屋書房』さんをレポート
「シガセイサクショものがたりを欲しいという方がおられ、取り寄せようとしたのですが流通していないので、調べて電話しました。1冊注文します。」
とのこと。ええええっ???感動的ではありませんか(いやその前に、流通してなくてすみませんでした)。わずか1冊。されど1冊。大阪市中央区という、さとびとは縁遠い場所からのご注文。そこにもシガさんブックを求めてくださる方があった。しかも、「そんな本は知らないよ」ではなくて、こんなマイナーな発行元を探して電話してくださるなんて、とんでもなくお客様思いの書房さま。ぜひお会いしたくなり、行ってきました。
奈良から行くと、近鉄難波駅下車。地下商店街なんばウオークを通ってB17番出口から上がると近いです。元大阪市民だったとはいえ、すっかり不案内になっていましたが、歩くグーグルマップこと部員Mさんについていき、きょろきょろしながら到着しました。
アーケード通りの中にある書店。料理専門書を中心にお取り扱い(柴田書店の特約取り扱い書店さんです)とあって、料理が趣味である部員Mさんも興味しんしんでした。
どぎまぎと、おぼつかない手際で「シガセイサクショものがたり」を無事に納品。どうして大阪で奈良でも無名なさとびこブックスが求められたのか謎ですが、間接的にシガセイサクショさんをご存知の方からだったようでした。
幸運にも、代表の柴本尚明さまに会わせていただきました。
「もう何十年も前の話になるけどね、日販、トーハンに次ぐ大手取次店で大阪屋というのがあった。もう今はなくなってるんだけど。そこの社長がね、『これからは、漫画とビデオの時代がくるんだ。本よりも漫画やビデオに変えるべきだ』っていうもんですからね、わたしは漫画とビデオを少し並べていたんですけど、やめたんですよ」
「え?」
「そんな大手の会社が書店にそういうことを言って回っているということは、みんながそうすると思ったんですね。だったら、うちは同じことをしないでやめてしまおうと。当時は『波屋書房はガンコだ!』とかなんとか、ずいぶん言われましたけどね」
とにこにこ笑顔でエピソードを話してくださいました。
たしかに、書店はいっとき、漫画、ビデオ、参考書などすぐに売れる本ばかりになり、文芸書や専門書が減っていき、そしてインターネットの台頭とともに書店そのものが減っていったという流れを感じます。でも、今残っている書店は、ガンコ?に書店としての個性を守り、ファンがいらっしゃるところではないでしょうか。
「うちはファミリー経営でね。手書きの筆文字は妻が書いています」問い合わせしてくださったご当人は息子さまとお見受けしました。今は書店が閉店するニュースが多いなか、波屋書房さまは売り上げもぴかぴか。東京のお客様が多いそうです。東京には、もうこんなレトロな書店は残っていないのだとか。
「料理の専門書ではね、梅田の紀伊國屋を抜いて1位なんですよ」(たしかにそう聞いたと思うんですけど、微妙に記憶違いありましたらごめんなさい)
すごいです。喜ばしいです。街に書店があることって、なんて豊かなんでしょう。いつまでも繁栄してくださいませ。さとびのような小さくて(大都市から見ると)読者がいるかいないかわからない出版物は、こんな偶然がなければご縁のなかったはずの書店さまでした。奈良から出かけてみて、ほんとによかったです。わたしたちも、なんだか「今日ここで本を買わないのはもったいない」という気持ちになり、興味をそそられる本や勉強になりそうな本を買い求めました。そしたら、「カバーをつけておきますね」との声が。そうそう、冒頭の紹介記事にもでてきたブックカバー。
「レトロ感あふれる辻馬車のイラストは「大阪の竹久 夢二」と呼ばれた宇崎純一さんのもの。」
中央の部分が空白になっているのは、購入した人が本のタイトルや購入日などを手書きするためのスペースだそうです。なんて素敵な。
ブックカバーが人気になるなんて、憧れます。さとびもいつか、お目当てにしていただけるようなブックカバーを作ることができたらいいなという、あたらしい夢が生まれました(その前に、ブックカバーが必要なくらい売れてみろっ!て、今、空から声が)。
シガさんにも早速お伝えすると、喜んでいただけました。さとびと、シガさん。いっしょに、ブックスのこころを伝えていきましょうね。
大阪市内のみなさま、(すでにファンの方もあるかもしれませんが)波屋書房さんへ一度お運びくださいませ。楽しそうな美味しそうな、プロフェッショナルな本に囲まれる幸せをぜひ。
大阪まで遠い方は、さとびこオンラインショップでもどうぞ。
『自然の色 手作りの服 シガセイサクショものがたり』
奈良蔦屋書店さまでもお取り扱いいただいています。
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