この記事はさとびごころVOL.48 2022 winterよりの転載となります。内容は掲載当時のものです。
昨年この愛菌家コラムを連載中に、結婚して母となった草野みなみちゃんによる、愛菌子育ての実況中継です。子育ての終わった方には懐かしさを、今まさに子育て中の人には愛菌ライフのエッセンスをお楽しみいただけます。(編集部)
こんにちは。先日初めて屋外のキャンプイベントで手前みそ作りワークショップを行ったのですが、大豆の冷めていく早さと潰しづらさに四苦八苦させられた愛菌家みなみです。教訓:みそ作りワークショップは屋内で行うものである(笑)。
さて、冬ですね。愛菌家として寒い季節にみなさんにおすすめしたいものはいくつかありますが、やっぱり今年も「お湯シャン・お湯洗い生活のすすめ」のお話をさせてください。お湯シャンとはシャンプーやリンスなどの洗剤を使わずにお湯だけで髪の毛を洗うことで、一時期著名な芸能人が実践しているとかで話題になったこともありますが、何も特別なことではありません。そもそもシャンプー・リンスが日本国内で広く一般的に使われるようになったのは実はかなり最近、戦後のことで、それまでは髪を毎日洗う習慣自体が無かったようです(1930年代に発売されたシャンプーのキャッチコピーは「一週一度は疲れてゐても」)。
お湯洗い生活とは、体を洗う時に基本的に石けんなどの洗剤を使わずにお湯だけで洗い流す方法です。もちろん髪や体を清潔に保つことは大切ですが、それはイコール洗剤を付けてごしごし洗うこと、ではありません。
わたしたちの体の表面、表皮には無数の常在菌が存在していて、彼らが汗をエサとして弱酸性の代謝物を作り出してくれるおかげで、アルカリ性を好む病原菌の増殖や侵入を防ぎ、お肌はしっとりつやつやするわけです。肌の洗い過ぎはこの大切な常在菌を根こそぎ洗い流してしまいます。
また表皮下では毎日どんどん新しい細胞が作られ、一番上の角質層は少しずつ自然に剥がれ落ちます。これがいわゆるアカで、髪や体を洗う意義はこの自然に剥がれ落ちたアカをさっと洗い流すことであり、まだ剥がれ落ちる準備のできていない表皮をごしごしこすって傷付けたり、お肌を守っている自然な皮脂膜を洗剤で洗い流してしまって乾燥させたりすることではありません。
でもやっぱり、今まで毎日洗剤で洗っていた髪や体をいきなりお湯だけで洗うようになったら、臭くなったりかゆくなったり、べたべたして気持ち悪いんじゃないかと思われますよね。はい、正解です。最初の内だけね。だから気温が低くて発汗も少なく、匂いも気になりにくい冬にお湯シャン・お湯洗いを始めることをおすすめしています。
体の適応能力には驚くべきものがあります。今までは毎日洗剤で表皮に必要な皮脂まで洗い流していたために、体はその分お肌が乾燥しないようにと毎日せっせと皮脂をたくさん出してくれていました。それがお湯シャンやお湯洗いで適度な皮脂が残っている状態になると、自然と過剰な皮脂の分泌を抑えるようになります。つまり「洗い過ぎ=過剰な皮脂分泌」を繰り返していたのが、「洗い過ぎない=適度な皮脂分泌」というあるべき姿に戻るわけです。戦前まではみんなそうしていたように。
最初は徐々にシャンプーの回数を減らしたり、さっぱりしたい時は薄めたお酢やお塩で洗ってみてください。個人差もありますが、肌のターンオーバーの約一カ月を超える頃には完全にお湯シャン・お湯洗いでも匂いやべたつきが気にならなくなります。ちなみにわたし自身は完全なお湯シャン・お湯洗い歴丸6年、だんなさんはわたしに出会ってからなので丸3年、うちの子(1歳9カ月)は生まれた時からずっとですが、何も問題無く、冬でもお肌はカサカサせず健康に生活しています。
ここでお湯シャン・お湯洗いの利点を改めてまとめると①お湯で一回洗うだけなのでともかく楽。時間やガス代の節約にもなる②皮膚常在菌と仲良くなれるので髪もお肌も健康的につやつや③シャンプーなどの洗剤を排水に流さなくて済むので環境にも優しい④シャンプーなどを買わなくていいので経済的⑤お風呂場に何も置かないのですっきり、掃除もしやすい!といいこと尽くめなのです◎さあこの冬は、Let‘s お湯生活!
さとびごころVOL.48 2022 winter掲載
文・草野みなみ
東京農業大学短大醸造学科出身。ライフワークとして「発酵ワークショップ」を随時開催。