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醤油小噺 第8話 ー第2部ー

この記事はさとびごころVOL.35 2018 autumnよりの転載となります。内容は掲載当時のものです。

 

 片上醤油、片上裕之です。第2部です。今回は麹についてちょっと詳しくお話しします。

 米こうじにだけ、「糀」の字をあてました。それ以外の雑穀は今も麹です。だから「しょうゆ糀」は「米糀」に醤油を混ぜた発酵調味料。「醤油麹」は醤油を作るために蒸した大豆と炒って挽き割った小麦に麹菌を繁殖させたものです。発音が同じですからややこしいですね。

 本題に戻って、麹菌には日本酒用、醤油用、焼酎用2種と大きく分けても4種類くらいあります。醤油用の中にも伝統的に醤油屋が使ってきた(醤油蔵から分離された)菌や、米麹の菌を改良して醤油用にしたもの。用途別にもこいくち用、うすくち専用菌、たまり専用菌など細かく分けられています。私たちユーザーはその中から好みのものを選んで使いますが、麹菌によって醤油の風味は相当変わります。麹菌の変更は醤油屋にとって大変なことなのです。

 醤油は使用する原料全てを麹にします。全ぜんこうじ麹と言いますが、豆味噌とならび、実は珍しいことなのです。清酒は使用するお米の3分の一だけ糀にします。残りは蒸米のまま仕込みます。豆味噌以外のお味噌もお米なり麦なりを糀(麹)にして豆は麹にしません。それだけに醤油にとって麹菌の存在感は大きいです。

 実際、麹つくり終盤には麹菌の菌体重量は原料に対し10 %強にまでなると言われており、本当は私ども醤油屋は醤油の原料表示に「大豆、小麦、食塩、こうじ(菌)」と書くべきではないかと思われるほどです。種麹屋さんには日本国中からいろんな麹菌が集められ、保管、育種(改良ですね)されています。酵素力、育てやすさ、生育速度、好きな温度帯、塩水に仕込まれて自己消化したときの風味など様々な要素が吟味されますが、市販される種麹は製品として欠点があってはだめで、様々な要素のうち、一つでも優れていない場合はほかの要素がどんなに素晴らしくても世に出さないそうで、種麹屋さんにはそういう意味で「惜しい菌」がいっぱいあるんだそうです。欠点を克服したものから新製品として出でてくるのでしょう。

 私たち醸造業者にとって種麹屋さんは仕入れ先。営業に来ていただいてエラソーな顔をしていますが、実は私たちは種麹屋というお釈迦さまの掌の上で暴れる孫悟空のようなものなのかもしれません。

さとびごころVOL.35 2018 autumn掲載

文・片上裕之(片上醤油蔵元)

さとびごころ連載

片上裕之

片上醤油蔵元

醤油小噺

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