この記事はさとびごころVOL.29 2017 springよりの転載となります。内容は掲載当時のものです。
今回は醤油の種類についての話です。醤油はJAS 法によって定義されていますが、それによると醤油はこいくち、うすくち、たまり、しろ、さいしこみ の5種類に分類されることになっています。かいつまんで説明すると、こいくち醤油は大豆小麦をほぼ等量使用し、濃厚なうま味と特有の香りを有するもの。うすくち醤油はほぼこいくちと同じですが、着色を抑制したもの。たまり醤油は大豆のみまたはごく少量の小麦を用い、非常に濃厚なうま味を持つもの。しろ醤油はごく少量の大豆(ということはほとんど小麦)を用い、着色を極端に抑制したもの。さいしこみしょうゆは生揚げ(醤油の原液です)にもう一度麹を仕込んだもの。非常に濃厚なうま味を持つ。となっています。法律というものはわかりにくいというか、悪文ですが、どんな読まれ方をしても誤解が生じないようにとなるとまあ仕方のないところです。醤油の種類ごとの特徴はまた改めて詳しくお話ししようと思います。
ところで醤油は植物性の原材料のみでできていなくてはなりません。上記の醤油の定義、もう随分昔に決められたもので、終戦後食糧難の時代、大豆小麦以外の代用原料で醤油が作れないかという研究が進められる中、そういった代用原料で醤油を作ることが無いよう動物性の原料を厳しく禁じたものなのです。今どきそういった代用原料で醤油が作られるなど考えられません。しかしその規定のために鰹節の出汁など、動物性の旨味が入ると醤油と名乗れなくなるのです。さしみ醤油とかだし醤油とか土佐醤油とかポン酢醤油とかいろんな醤油ではない醤油があります。出汁が入ると醤油加工品、あるいは「つゆ」などの分類となります。でもそういった醤油加工品がつけ、かけ用途など、ほとんど醤油の代替品として使われているケースが多くなってきました。そうなんです。出汁という風味原料を使用した醤油加工品が多種多様になった今、法律や規定が実情に合わなくなってきているのです。正確には醤油の種類なんてどうでもよくなってきているというお役所には怒られそうなお話です。ですが、こういった事態も醤油が、他の調味料と相性が良い、適合性が広いということの表れでもあります。大豆、小麦、食塩のみで作られるシンプルだけど複雑玄妙な調味料、醤油をこれからもよろしくお願いします。
さとびごころVOL.29 2017 spring掲載