この記事はさとびごころVOL.23 2015 autumnよりの転載となります。内容は掲載当時のものです。
奈良県葛城市に 縁もゆかりもなかったのに
築50年の古いおうちと出会い
移住までしてしまっていることは
私自身がとても驚いています。
古道具の移動販売をはじめて数年後には
大きな古い家具のご 要望の機会に恵まれ
父の形見の小さな車では限界を感じ
当時、倉庫として借りていたガレージも
とてもお越し頂ける状態でもなく
そろそろショールームと作業場を兼ねた
小さな場所を求めるようになってきていた
ある日のことです。
知人とのなにげない世間話から
事態は急展開をしていきます。
場所を探していることや
なんとなくのイメージを思いつくままに羅列していると
その知人が すぐに携帯電話を取り出し、
知らないどなたかとの会話をはじめ
なんとその翌日には
このおうちと
運命的な出会いを果たすことになってしまいました。
3年間空き家だったこのおうちは
畳は朽ちてほこりまみれ
ブルーシートが敷かれていました。
板の間や壁紙から
昭和の時代の名残を感じさせるとともに
その当時お住まいだったご家族のお子様が描かれたであろう
ご両親の似顔絵もあって
あたたかいご家庭のぬくもりも
同時に感じることができました。
出会ってひと月後には
このおうちからはじまる可能性を信じることを決めた後に
この場所は あと1年借り手がなければ
解体をされる予定だったことを知りました。
壊して また新しいものを作る
非生産的なことに時間とお金を費やすことが
あたりまえになってしまっ ているこの時代
その一方で
古いおうちに住みたい人たち
古いおうちでお店を開業したくて
何年も探し求めている人たちが
増えている現状も目の当たりにします。
現に私は
このすてられそうだった築50年の古いおうちのことを
数年を経た今もなお 私の暮らしに
・・・おおげさに言えば
私の人生になくてはならない存在だと断言できます。
捨てられそうだった古いおうちを
これからも たいせつにしていきます。
さとびごころVOL.23 2015 autumn掲載