この記事はさとびごころVOL.45 2021 springよりの転載となります。内容は掲載当時のものです。
昨年この愛菌家コラムを連載中に、結婚して母となった草野みなみちゃんによる、愛菌子育ての実況中継です。子育ての終わった方には懐かしさを、今まさに子育て中の人には愛菌ライフのエッセンスをお楽しみいただけます。(編集部)
こんにちは。先日うちの愛菌赤ちゃんがついに1歳になりました、愛菌母ちゃんのみなみです。いやはやこの一年、早かったような長かったような…。今この原稿を書いているわたしの背中で静かな寝息を立てているわが子ですが、起きている間はアクティブそのもの。掴まり立ちと伝い歩き、高速ハイハイで手の届くすべての(大概触ってほしくない)ものを触り、ごはんは自分でスプーンを使って食べたがるし(大惨事)、まだしゃべれないのに意思表示も半端ないです(主に奇声)。
この1月に自然農法の研修を終えついに村に移住し新規就農準備中の愛菌父ちゃんとふたり、愛すべき小さな怪獣に振り回されがちの日々ですが、家族3人やっと毎日顔を合わせて過ごせるようになり、しあわせであります。
この一年余り、お湯シャン石けん無し・布おむつ・粉ミルク無し・ノーワクチン(うちにはテレビ・炊飯器・掃除機などの家電もありません)の無い無い無いで進めてきた愛菌育児ですが、実はこの春より、わたしの仕事復帰を機に村の保育所のお世話になることになりました。
タイミング良く新しい保・小・中合同校舎も完成し、村産の木材をふんだんに使ったピカピカの学び舎にわが子が通えることにはわくわくしますが、少し変わっている自覚のある母ちゃんと父ちゃんに育てられるこの子が、どうやって小さな村の集団生活に混ざって行くのかドキドキもします。とは言っても最初の一年はお弁当持ち、おやつも持参して良いと言われ、牛乳も強制じゃないし、とりあえず食べ物の心配はまだ大丈夫。残念ながら布おむつ対応はしてもらえないそうなので、海外産のオーガニック紙おむつなるものを入手。初めての紙おむつ、どんなもんなのか入園前に母ちゃんも赤ちゃんも予行練習が必要かな…。
ところで、ものはできるだけ買わず、持たず、もらう・借りる・拾う(!?)でやってきたわが家、赤ちゃんに関するもの(布おむつ、ベビーバス、ベビー服、おもちゃなど)ほぼすべてが頂きもので、必要最小限しか持ち合わせていません。それが保育所という社会に混ざるためにはどうしても「買って準備する」ものが多く、「買う」に不慣れなわたしは、なかなか準備が終りません(汗)。
そう言えば、しばらく村外へ食料品の買い出しに行っていません。村内産の野菜が並ぶ週に一度の朝市や知人からの卵、鹿肉の頂きものなど、村内だけで結構食べ物が賄えます。
今年の3月11日で東日本大震災発生から丸10年が経ちました。福島出身のわたしですが、その頃は海外にいました。ただ、震災を機に西へ移り住んだ身として、自分の住んでいる土地のものを安心して子どもに食べさせられる環境のありがたさと尊さは知っているつもりです。
何でもお金で買える現代ですが、その行き着いた先があの福島原発事故であるような気がして、今日も無い無い無いの脱・消費生活を楽しむ愛菌母ちゃんなのでした。
さとびごころVOL.45 2021 spring掲載
文・草野みなみ
東京農業大学短大醸造学科出身。ライフワークとして「発酵ワークショップ」を随時開催。