この記事はさとびごころVOL.32 2018 winterよりの転載となります。内容は掲載当時のものです。
片上醤油、片上裕之です。今回は第6話。醸造用語のあれこれについてお話しします。手前ども醤油屋同士では次に書いた醤油用語を含む醤油語?で話し、業界外の方は何が何だかわからない状態になってしまわれますが、それをわかりやすく翻訳してお話しします。
醤油屋用語集
麹菌(こうじきん)の胞子を種麹(たねこうじ)と言います。もやしとはこの種麹のことです。もやし屋とは種麹製造メーカーのことです。大豆と小麦と種麹を混合すると、それらの混合物を「麹(こうじ)」と呼びます。
麹作りの期間中、その状態にかかわらず「麹」と呼びます。麹を育てる部屋を麹室(こうじむろ)と言います。麹作りが終わると麹室から引き出しますが、それを出麹(でこうじ)と言います。出麹は作業の名前ですが、出された麹の呼び名でもあります。
出麹を塩水に入れることを「仕込み」と言います。仕込みが済むと出麹と塩水を総称して諸味(もろみ)と言います。仕込みのときに一定量の麹にどれだけの塩水を合わせるかが汲(く)み水歩合(みずぶあい)と言います。品質の規格に大きな影響があります。
塩水の濃さはボーメ計という比重計の数値で表します。10%の塩水の比重がボーメ10度となるように出来ています。通常ボーメ18~20度(20~22%)の塩水が使用されます。比重は分析器具を用いなくても製造現場で即結果を見れる0・1%の精度で計れるので重宝されています。
諸味を船の櫂のような棒でかき混ぜることを櫂入(かいい)れと言います。諸味が発酵することを醤油屋は「沸(わ)く」と言います。発酵最盛期は本当に沸いているように見えるのです。
諸味を絞る装置を舟(ふね)と言います。昔、袋で搾っていたときは舟の形をしていたのです。諸味を搾って垂れた液を生揚(きあ)げと言います。生揚げを加熱殺菌することを火入(ひい)れと言います。火入れして濁った生揚げを静置して清澄な液を得ることを澱引(おりび)きと言います。澱引きが済むとやっと醤油、製品と呼びます。
醤油がキリッと澄んでいることをサエていると言います。醤油の色調が鮮やかに赤いことをテリが良いと表現します。醤油を長く口に含んだ時の味を押味(おしあじ)と言います。
さとびごころVOL.32 2018 winter掲載