この記事はさとびごころVOL.37 2019 springよりの転載となります。内容は掲載当時のものです。

　私の実家のある奈良県北葛城郡王寺町周辺、奈良盆地の北西部には、森林や林業を担う主な機関である森林組合がありません。地域の森林について何か相談したくても、受け付けてくれるような所がありませんでした。なので、この地域に森林に関してのよろず相談を取り扱ってくれる森林組合のような仕組みが欲しいなと思っていました。

　一方で、私たち谷林業では陽楽の森（王寺町と上牧町をまたぐ所にあります）を中心に、都市近郊の森をより価値の高いものにしていきたいなと思い、イベント開催や教育福祉活動への空間提供など、一定の成果をあげてきており、次のステージのあり方を摸索していました。そしてそれは、漠然とではありつつも「日常化」すること、つまり生活の中に森を取り入れることではないかなと思っておりました。

　そんな折、いつもお世話になっている愛媛大学名誉教授の泉英二先生に、今後の事業展開と当地域においての森林組合のような組織の必要性などを相談している中で、「比較的容易に結成できる一般社団法人という枠組みを使って組織を作り、腰をすえてチャレンジしてみないか。協力してあげるから」という示唆を頂きました。

　私たちの地域には、偉大なる世界遺産である世界最古の木造建築物法隆寺があります。そのゆかりの人物である聖徳太子は「大いなる和を以て貴しとなす」という言葉を残されました。大和協の「やまと」という言葉には、この言葉の精神を実践していこうという意気込みと願いを込めました。近い将来、その精神に通ずるような、人と人、人と森が和をもっていける地域が出来たら良いなあと思っています。

　大和協は、林業や森づくりを既存の枠にとらわれることなく、森林所有者の悩みに寄り添いながら、その解決策と重なりあうかたちで地域エネルギーの社会課題に取り組んだり、林業の場でもある森林が教育や福祉施設の活動の場にもなり、小さい子供たちが遊び、それをシルバー世代の方々が温かく見守っていたり、おしゃれなイベントが開かれて若い人々が往来しているような、幅広い活動を行っていける広い意味での林業や森づくりを目指していきたいと思っています。

　「山と（やまと）○○」。山と町で森や人に資する様な様々な取り組みが始まり、それらがさらにつながっていき、それぞれが化学反応を起こしていくような取り組みが実現していけば、おのずと和を以て貴しとなせる豊かで安心できる地域の未来が無限に拡がるのではないかと考えております。

　まだまだ始まったばかりの未熟な大和協ですが、地域の山において、山と今日（大和協）から始まっていく色々な物語を皆さんにお伝えし、共有出来たら良いなと思っています。