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今日も晴々 オノ暮らし 第1回 小野晴美

この記事はさとびごころVOL.36 2019 winterよりの転載となります。内容は掲載当時のものです。

 

 はじめまして。奈良県の最南端、山を越え越え辿り着く下北山村で暮らしています小野晴美と申します。夫と共に2017 年春に下北山村に暮らしの拠点を移し、2018 年夏から一棟貸しの小さなお宿 「山の家 晴々(ハルバル)」をはじめました。村の自然や暮らしを体感してもらえる宿、私たちが目指したい「人と自然に優しいステキな暮らし」の実践を紹介できるフィールドとして、少しずつこの場を育んでいるところです。夫婦二人で「オノ暮らし」という屋号で、今は村での暮らしや活動について発信しています。

 「オノ暮らし」の〈オノ〉には、3 つの意味があります。一つは、私たち夫婦の名前の〈おの〉。2つ目は、大好きなハワイの現地語でステキ!!美味しい!!を意味する〈ono〉。そして3 つ目は、山暮らしに欠かせない生活の道具である〈斧〉。

 自分たちの名で責任をもち、手を動かして、ステキな暮らしをつくっていこう。未来に継承していきたい「人と自然に優しいステキな暮らし」を今ここから紡いでいこう。「オノ暮らし」にはそんな思いを込めています。

世界と日本を旅した後に導かれて

 下北山村に移り住むまでは、世界と日本のローカルな暮らしを訪ねて巡る旅をしていました。友人知人のツテを頼りに、名前も知らない小さな町や山奥のコミュニティを訪ねたり、Workaway(※1)やWWOOF(※ 2)を利用してホームステイやファームステイをしたり。約3 年の間、世界と日本の様々な地域を訪ね、その土地、その人の「暮らし」にお邪魔させてもらっていました。下北山村にご縁をいただいたのは、その旅の延長みたいなもの。「そろそろ、腰を据えて自分たちの暮らしを作っていきたい…」という思いが強くなった頃に、導かれるように辿り着いたのがここ下北山村で、気付いたら自然と暮らしが始まっていました。

 私たちが移住を決めた一つの理由に、とある老紳士の存在がありました。その方は、「100 年先の下北山村」を構想されているとのお噂。天然の森の姿を取り戻そうと、どんぐりから苗木を育てたり、ホタルが飛ぶかつての風景を蘇らせたいと、ビオトープを自作したり。大きな構想のもと、地道な活動を続けていらっしゃるというお話を聞き、まだお会いしたことがないその方に深く共鳴したのを覚えています。後に、巡り巡ってお会いすることができたその方は、現在、私たちが宿をさせてもらっている土地のオーナーさんです。

 さとびごころとのご縁も同じように、何かに、誰かに、導かれたような感じがしています。

 「100 年住み続けたい地域には、『さとび』と『こころ』、自然にも人にもやさしい思想と取り組みがある」というコンセプトのもと手作りされているリトルプレス。さとびごころに込められたその想いに触れた時、自分たちの胸の中とまさに同じ…!!と静かな興奮が沸き起こりました。

※1 Workaway =労働を提供する旅行者と宿泊・食事を提供するホストをマッチングするサイト

※ 2 WWOOF =主に有機農場での農的労働と宿飯・知識を交換するボランティアの仕組み

ニュージーランド北島にて。激減する固有種・国鳥であるキウイの個体数調査のため森でキャンプ。深まる夜と共に森に入り、マオリ族の文化に触れた貴重な体験。
平和の国コスタリカの大好きな家族。オーガニックファームをはじめた同世代のカップルは、日本の昔ながらの農的暮らしからたくさんのことを学んでいた。離れていても繋がっている大切な仲間。
メキシコ、トゥルム郊外の小さな養鶏ファーム。毎日200羽の鶏のお世話をした。安全で新鮮で美味しい卵ってどんなのか初めて知ることができた経験。ファンキーなメンズたちとの共同生活も面白かった。
メキシコ。森の中で自給自足的暮らしをしているコミュニティにて。自然素材を用いた建築法で小屋を建てている途中。たくさんの不思議な体験をした森での生活は忘れられない。

地球に住む一人一人の暮らしから

 私たちが「暮らし」に重きをおく理由。それは、この地球に住む私たち一人一人の「暮らし」の在り方で、100 年先の未来の姿は変わってくると考えるからです。凄まじいスピードと際限ない情報量の中で何が正解なのかわからないまま、日々、選択を繰り返し生きている私たち。一つずつでいいから、無自覚で無責任な選択を減らし、無理や矛盾の少ない暮らしをしていきたい。それが、「100年先の未来のために」「人と自然に配慮した」「持続可能な暮らし」に繋がっていくのではないか。そんな想いで、私たちは今ここで自分たちの暮らしと向き合っています。

枇杷(ビワ)の葉エキスが気づかせてくれるもの

 山の家 晴々(ハルバル) の洗面所には、「枇杷の葉エキス」が入った小さなボトルが置いてあります。泊まってくれたお客さんは、気に留めない人もいるし、「これ、何ですか?」と興味を示してくれる人もいます。中には、「うちでも使っていますよ」という人も。

 枇杷の葉エキスには、殺菌・抗菌作用や、痛み止め・かゆみ止めなど皮膚の炎症を抑える効能があります。日焼けしたときや虫にさされたときにスプレーしたり、火傷をしたときの塗り薬にしたりと、我が家では一番お世話になっている手作りのお薬です。

 「枇杷の葉に助けられている」と感じる瞬間なんかが暮らしの中にあると、身の回りにある植物や野草を見る目が変わり、自ずと自然への興味関心が芽生えてきます。そんな話をお客さんにしていると、実際に興味を持って「試してみます」「調べてみます」と小さなアクションを起こしてくれる方がいらっしゃる。気づきから行動へ、その一歩が生まれることは私にとってとても嬉しいことです。

選択を見つめなおすきっかけを

 私たちが投げかけたいこと。それは、難しく大それたことではなくて、ほんの少し知るだけで、ほんの少し考えるだけで、その先の選択が変化していくということ。そして、その選択の先にある、日々の暮らしが少しずつ変化していくということ。特別に意図したわけではないけれど、枇杷の葉エキスの小さなボトルのように、ほんの小さなことをきっかけに、自分の身体のケアのこと、毎日口にする食べもののこと、身の回りの自然のこと、人と自然の関係のこと…日々の暮らしをかたち作る小さな選択について、自覚し、考え、見つめなおす機会が生まれる。そんなきっかけって、実はすぐ近くにあったりするのではないでしょうか?

 オノ暮らしがお届けするこの連載にも、そんな小さなきっかけが散らばっていたら幸いです。どうぞ一年間、ごゆるりとお付き合いのほどよろしくお願い致します。

オノ暮らしのドアは、いつでもあなたにオープンです。

さとびごころVOL.36 2019 winter掲載

文・小野 晴美 オノ暮らし主宰 山の家 晴々-haru ∞ baru- 運営

オノ暮らし: https://onogurashi.localinfo.jp/

Facebook : https://www.facebook.com/ オノ暮らし

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