この記事はさとびごころVOL.41 2020 spring よりの転載となります。内容は掲載当時のものです。
住宅環境においては、どこも大地が呼吸できない状況になっています。それは、コンクリート基礎、コンクリート擁壁、三面コンクリート張り水路、アスファルト舗装路に囲まれていて、通氣通水出来なくなっているから。そのため土中にこもった有機ガスは、コンクリート際だけに留まらず、車道から離れた奥山までにも影響を及ぼしています。
大地の再生施工した住宅での効果
①庭木の樹勢が良く、且つ、枝張りや新芽が落ち着く
庭木が暴れるように四方八方バラバラに伸びていくのは、根のある土中環境が詰まっているから。
庭木の根は、通氣通水が良いところで活発になります。よく暗渠排水パイプや雨水排水管の中に根っこが入り込んで、ぐんぐん伸びているところを見かけたことがある人も多いと思います。根が落ち着いていくと、地上部の枝葉も落ち着いてきます。
②湿気の籠もる床下改善、カビ防止、シロアリ対策
土中に停滞する湿氣は、カビ、木材の腐敗、シロアリなどの発生原因となっていきます。まずは地上部の風通しのための剪定を。
風が通ると、その風につられて土中の水や空氣も動き出しますので、風道に連動した水脈を掘っていきます。また、植物の葉は風道が通るように伸びていく習性も見ることが出来ます。
③蚊などの害虫減少
コンクリート擁壁などで停滞した場所に、蚊が沢山居る現場が多くあります。ここに地上部の風通しと土中の通氣水脈が通ると、蚊が居なくなるって事は幾度も経験しています。詰まった土中には嫌気性細菌が多く、有機ガスが土中に溜まっているからではないかと考えています。有機ガスつまり二酸化炭素に蚊は寄ってきますね。
住宅周りでの大地の再生施工には、大むね次の2つの場合があります。
1つは、住宅街の中にあり、周囲がコンクリートアスファルトに固められてる場合。
この場合は、所謂庭師による作庭といった色合いが濃くなります。大地の再生では植栽土木とも呼んでいて、樹木の根が大地地形を支えています。まさに!「土木」の文字通り、土と木で大地を支えていくことです。また、縦方向の空氣と水の動きも生まれます。土中と地上部に空氣と水の流れがあると、天然のラジエーター(冷却機能を保った大地)となります。京都市山科区の幼稚園では真夏の園庭温度が10度以上も下がったとか。
この事からも、都市部における大地の再生が広がっていくことは、過熱した市街地に対して出来る唯一無二の回答ではないでしょうか。また、通氣している地面は、大雨でも水溜まりもなく、雨の日に鍬で整地しても泥アクなどないサラサラした状況となって、心地よい園庭となっています。
2つめは、 里山環境にあり、背後に山、周囲に水が流れている場合。
裏手に山があり、家の脇を水路が流れている古民家。このような場所での作業は、土木の色合いが濃くなります。
先ずは、先人たちがどのように地形や水と共に暮らしてきたのか、読み解くことから始めます。かつての日本には土中に流れる水脈を読む達人が当たり前に沢山居たようですね。だいたいどこの古民家も、近代に施工されたコンクリートがあり、その裏側が空洞化して水ミチが出来て、水が停滞している現場ばかり。コンクリート擁壁裏の空洞はとても危なく、そのままにしていると土砂崩れに繋がります。また掘りすぎると水を多く呼び込んでこれまた土砂崩れとなるので、細心の注意と観察力が要求されるところ。僅かな手感触や匂い、色の違いなどを見ていきます。また、地面を掘ると水が湧く場所がわかり、土木の達人” 空海” にでもなった氣分にもなれますよ。
どちらの場合も、大地の呼吸を取り戻した場所は、なんとも居心地よい感じになるんです。
奈良では田原本の鏡作坐天照御魂神社。大地の再生施工してることを知らない参拝者から、心地よさが格段で驚きの声もあがっていました(鏡作坐天照御魂神社では、数日作業が始まったばかり)。関西に目を向けると、大規模に植栽土木で施工した公開敷地として、兵庫県西脇市のTamakiNiime があります。めちゃ美味しい社員食堂も利用出来るので、ぜひ足を運んでみてください。
さとびごころVOL.41 2020 spring 掲載
寄稿 西尾 和隆(環境再生活動家)