この記事はさとびごころVOL.44 2021 winterよりの転載となります。内容は掲載当時のものです。
本格的に寒い冬がやってきましたね。
今号より暮らしのことについてもお話しさせていただくことになり、タイトルも若干変更しました。
これまで同様よろしくお付き合いください。
薪ストーブのある暮らし
私と夫、そして猫2匹が暮らす東吉野村は、きれいな清流と深い山々に囲まれた、かつては林業で栄えた村です。
標高が高いことと、川から立ち上る冷気の為に、冬はとても冷え込みます。
しかも、私たちの暮らす築100年近い古民家は、断熱材が入って機密性の高い新建材の建物と違い、あちらこちらからすきま風が吹き込んできます。
台所にはかまどを使って料理をしていた名残の高い吹抜けの天井と黒く煤けた壁がそのまま残っていて、当時の暮らしが偲ばれます。
時代が代わり、私たちが来るまで長い間放置されていたかまどは既に使用できない状態でしたが、今は代わりに薪ストーブが活躍してくれています。
灯油が燃焼する時に発生する化学物質が出ず、地元の間伐材の杉やひのきを使って得られる遠赤外線の暖かさは格別のもの。
暖をとりながら、煮炊きをしたり、洗濯物を乾かしたりと、一石二鳥どころではない活躍ぶりです。
今、私たちが享受している便利なエネルギーの多くが、産地で暮らす人々には届かず、巨大企業の懐を潤し、時には地球環境を汚染しながら運ばれてくることを考えると、複雑な気持ちになります。
もはやエネルギーなしの暮らしなど考えも及びませんが、自分たちの手で割り、運んで積み上げた薪で起すエネルギーは、林業で栄えたこの村ならではのエコロジーで平和的な副産物。
少しばかり地球環境に貢献した気分になりつつ、燃える炎を見ていると、厳しい冬の寒さも心なしか和らぐような気がしています。
手前味噌をつくろう
この時期のお楽しみは手前味噌づくり。1年分の味噌を仕込む一大イベントです。
市販の味噌は輸入大豆が使われ、火入れして発酵を止めたものや、短期間で人工的に加温して大量生産されたものが多く、味や香り、栄養面でも自家製味噌とは比べものになりません。
すべての調味料についていえることですが、天然醸造の本物を使うと、それ自体の持つ旨味に加え、素材本来の味が引き出され、余計な調味料や出汁すら必要なくなります。
茹でて潰した大豆に塩をまぶした米麹を混ぜ、空気に触れないように、酒粕や昨年の味噌などで蓋をして最低半年間、置いておくだけ。あとは時間が勝手に美味しくしてくれます。
既に味噌づくりに慣れた方は、ぜひ米麹づくりにもチャレンジしてみてください。
ネットでも簡単に買える種麹を、蒸したお米にまぶして1週間程、36℃前後に温度管理して、時々切り返してあげるだけで意外と簡単にできますよ。
「医者に金を払うより、味噌屋に払え」という言葉もあるほど、栄養豊富で日本人の食生活に欠かせない存在のお味噌。今年からは自家製味噌で一日一杯の味噌汁生活、始めてみませんか。
・・・ 冬のおすすめ食養レシピ・・・
重ね煮味噌汁
冬の養生
冬は腎臓が1年分のエネルギーを蓄える季節です。腎臓はとても「冷え」に弱い臓器で、腎を冷やすと婦人科系疾患や糖尿病などのリスクが高くなります。また、生命エネルギーをつかさどる臓器ですので、腎の衰えは老化につながります。
記憶力の低下、白髪、脱毛、足腰の弱り、骨や耳のトラブル等の多くが腎の手当で改善します。
黒い色の食材(黒ごま、黒米、そば等)、豆、根菜類、海藻などが腎の食薬ですが、特に小豆はおすすめ。玄米ごはんに少量混ぜて炊いたり、塩だけで南瓜といとこ煮にしたり、毎日の生活に取り入れたい食材です。
動物性食品や白砂糖のとりすぎ、食べ過ぎによる血液の汚れは、腎臓を傷める原因になりますので気をつけて。
また、冷え症の方は全身をあたためるよりも、足元を温めることをこころがけてください。人間の体は上半身が36℃あっても、足元は31℃程度しかないそうです。暖かい空気が上に上るように、体を循環する気や血液も上へ上る性質があります。血液は身体全体の細胞に養分や酸素を供給し、老廃物を運び出す働きをしているので、うまく循環しないと毒素がたまり、内臓機能や自然治癒力、免疫力も低下してしまいます。足元を温め、上半身を薄着にすることで、血液が循環し、冷えにくい体質に変わります。
奈良県にはたくさんの靴下メーカーがあり、シルクやオーガニックコットンの靴下を重ね履きする冷えとり用の靴下が作られているのをご存知ですか。
肌に直接触れる部分に身につける天然のシルクは保温性に優れ、排毒作用も強く、はき心地もとても気持ちの良いもの。
毒素を出してくれるだけでなく、足元がふわふわ暖かいとそれだけで幸せな気持ちになりますので、冷え性にお悩みの方はぜひこの季節から始めてみてください。
来るべき春に備えて、エネルギーを蓄えるべく、暖かくゆったりとした時間を過ごしましょう。
さとびごころVOL.44 2021 winter 掲載
筆者プロフィール さんぺい・かなこ
宇陀市にて穀物菜食の店「菜食ごはん 休日ダイヤ」を運営ののち、2020年4月より食養アドバイザー、ケータリング等の活動をはじめる。
菜食ごはん 休日ダイヤ
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