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大地を再生しよう その4. 土砂災害対策について- 1

この記事はさとびごころVOL.43 2020 autumn掲載よりの転載となります。内容は掲載当時のものです。

① 山を流れる川、健康な川とは

 健全な川とは、どんなものでしょうか。大雨が降った川が増水しながらも透明で美しい流れとなっている様を見た事はありますか?

 いまでは日本の殆どの川は濁っています。このクリーム色に白濁している原因は2種類あり、一つは上流での表土の流出、もう一つはダムや砂防ダムにたまった泥アクです。泥アクが出ていると、大地も河川も呼吸できなくなります。前回までの連載にも書いたように、健全な大地は呼吸しています。同じように、健全な河川もまた呼吸しています。

 河川の表面上に見えている水は、まさに氷山の一角で、河川の下に膨大な伏流水が流れています。この伏流水が湧き上がり川となり、また沈み伏流水となりを繰り返しながら、川は流れています。

 この河床に泥アクが溜まると、伏流水が湧き上がることができなくなり、山の浸透水が川に流れ込むことが妨げられてしまいます。これでは山の斜面に水が溜まる一方で危ないですね。

ⅰ 表土の流出

 林業の衰退により植林した人工林が手入れ不足となり、下草が生えず表土の流出が進行しています。私には杉やヒノキが泣いているようにも見えます。山の手入れは国策として予算投入することこそ、国土強靭化であると考えます。

 また、カリカリに草刈りした箇所で、地表がむき出しになっている場合もあります。この場合は、グランドカバーとなるチップや草を使い、まるで絆創膏や包帯のようにカバーするように敷くと良いです。

ⅱ ダムや砂防ダムにたまった泥アク

 ダムに堆積した非常に細かい粒子となった砂が、雨で増水した河川で流されたものが泥アクです。土中の浸透性及び排水性が高い状況をつくっていけば、ドキュメンタリー映画「ダムネーション」(米)のようにダムを撤去していく公共事業を検討する時代も来るかもしれません。

②河川の堰堤や道沿いのコンクリート擁壁の影響

 川の一番小さな形が、どこにでもあるコンクリートU 字溝です。ここには、表面に流れる水だけが流れ込むことができます。しかし、土中の水は入っていくことができません。

 実際に、U 字溝の脇を掘ってみると、水気を多く含んで硬くしまた場所の可能性がほぼ100%です。あまりに締まっているため、植物たちの根っこも入っていく事ができません。この影響はU 字溝脇に留まらず、遠く離れた場所まで、それも山の山頂までにも影響するような状況を作り出しています。 例えてみると、開通した水道の蛇口に、100㍍の完全なホースをつないでも、先っぽを抑えたら蛇口まで水が止まってしまうのと似ています。こうしたことが、この国の川という川、山という山で実際に起こっているのです。

 土中には既に水が溜まっていて流れ込むこともできない、流れ出すこともできない、植物が吸い上げることもできない(詳細は前号までの連載1から3に記載)、山の自然のダムは満タンになっていて崩壊して水が抜けるのを待つばかりです。(次号につづきます)

次号では、③土中環境の悪化による植生への影響④根っこがよみがえるを予定しています。次号で最終回となる「大地を再生しよう」に、どうぞご期待ください。

さとびごころVOL.43 2020 autumn 掲載

寄稿 西尾 和隆(環境再生活動家)

さとびごころ連載

大地の再生

西尾和隆

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