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JOUMON TODAY 縄文は基層文化

この記事はさとびごころVOL.36 2019 winterよりの転載となります。内容は掲載当時のものです。

 

縄文は日本の基層文化。そう気づかせてくれる、暮らしの中にある縄文を見つけてみませんか。

木を使う

直径約1 メートルのクリの木柱を立てた大型掘立柱建物(復元 三内丸山遺跡)

日本列島に森が広がるとともに始まった縄文時代には、木をふんだんに使う文化が生まれます。

 木は伐採され、定住のための住居や施設、石斧などの道具類の柄や、容器などの素材となりました。交通手段である丸木舟は木をくりぬいて作られ、川や海を渡って、遠く離れた集団とも交流が行われました。

 木の加工方法や技術の基本はこの時代に確立したものが多いそうです。木のある暮らしは、縄文に始まります。

たき火

 一般的には竪穴式住居のまん中には炉があり、住居の外にも土器を焼くなどした火がありました。旧石器人にとって道具であった火は、縄文人にとっては神聖なものになったといいます。

 薪ストープやたき火に憧れたり、キャンドルのほのかな灯りに癒されるのは、わたしたちの中に眠る縄文ごころが刺激されているのかもしれません。

クリ、トチの実など

 食料の多くは、肉や魚介類以上に、効率的に採集でき保存も可能な堅果類が中心だったことがわかっています。クリは、奈良県でも計画的に栽培されていたと思われる跡が見つかっています(12P)。秋に集めた木の実は、貯蔵して一年を通して食べられるよう工夫されました。

 トチはあくが強いかわりにカロリーが高く、多くの遺跡から見つかっています。手間のかかるあく抜きの技術もすでに縄文時代からありました。今も奈良の山村では、トチ餅が郷土食になっています。

【下北山村でのトチのあく抜き】

 雑木を燃やして灰を取る。トチの実を水につけて虫出しをしてから、トチハギで殻をむいて実を取る。穴をあけたバケツに灰を入れて沸騰させたお湯を通し、穴から落とした灰汁に三日三晩浸した後、4 ~ 5 日間谷水でさらす。その後、1 回目と同様に再度灰汁に浸ける。一晩浸けたら、灰汁からあげて完成。(家庭によりあく抜きの仕方は千差万別です)

川上村で、お土産品として販売されている「とち餅」。

土鍋

 縄文といえば土器。定住と土器の出現をもって、縄文時代とされます。土器は、食物の煮炊き用が目的でした。

 中期以降東日本で多く出土する火焔型土器などは、実用性よりも芸術性、呪術性を感じますが、奈良の土器は実用向きのデザインのものが多いようです。木の実のあくを抜き、根や茎、肉や魚をおいしく、食べやすくし、殺菌もし、栄養価も高めました。今でも、わたしたちは直火に強い土鍋を使った料理が大好きですよね。冬はあったかい鍋料理を囲んで縄文談義はいかがでしょう。

ジビエ、きのこ、山菜、魚介類…。

 オオツノジカなどの大型獣が絶滅した後に始まった縄文時代では、ほぼ現在と変わらない種の動物が野山に棲息していました。シカ、イノシシなどはすばしこく、弓矢はそれに最適な狩猟具でした。これに使われた石鏃が多く出土しています。いわゆる矢印型の小さな石器です。狩猟の道具は変化しましたが、ジビエ料理として今につながっています。

 きのこ、山菜などの山の幸、魚介類などの海の幸、川の幸、日本人が旬の食材として楽しんでいるものの多くは縄文時代からの食料でした。

 この1 万数千年間、列島全体の生態系が変わるほどの大きな気候変動や災害がなかったという幸運を感じさせられます。

 麻は大麻と苧麻(ちょま) の2種類があり、いずれも中国から渡来した帰化植物と言われていますが、鳥浜貝塚(下記)から、麻で作られた縄や編物、大麻の種子が出土しています。
 江戸時代に武士の裃( かみしも) に使われた「奈良晒」は、今でも奈良県の伝統工芸品です。今でこそ麻薬として取り締まりの対象となっている大麻ですが、日本古来の大麻(下記参照※後日の編集部挿入)は幻覚成分が少ないと言われています。

 神社の御祓いに使う「大麻( おおぬさ)」や「注連縄( しめなわ)」など穢れを払う繊維として神事にも使わ
れ、麻は日本の文化や生活に深く結びついています。
日本麻紡績協会のHP などを参照)

2011 年、福井県若狭町の鳥浜貝塚から1984 年に出土していた漆の木の枝が、約1万2600 年前の縄文時代草創期のものであることがわかりました。それまで漆は、大陸からもたらされたものという認識が一般的でしたが、この研究により日本固有種であって、渡来ものではないと考えられるようになりました。9000 年前の漆塗りの副葬品も、北海道で発見されています(函館市の垣ノ島B遺跡)。
 さて現代の漆文化は、これからどうなるでしょう?安価なプラスチック製品よりも、一生大切にしたい漆塗りへと、戻っていけるといいですね。
 曽爾村では、漆を地域資源として活用する取り組みが始まっています。漆に親しんでみませんか。

青森県青森市の三内丸山遺跡(縄文時代中期)から出土した、通称「縄文ポシェット」は、植物質の素材で編んだ袋に漆加工されており、工芸品としても見事です。

(2016年三内丸山遺跡センターにて阿南セイコ撮影)

釣り針

 釣り針の形も縄文時代から現代まで、ほとんど変わっていません。縄文時代の魚釣りノウハウにはかなわないということでしょうか?

アクセサリー

 ヒスイやコハクなどの石、貝殻などを素材に、玉、耳飾り、ペンダント、ブレスレットなどが出土しています。おしゃれの始まりも縄文から。

「森羅万象に生命が宿り、山や森に神聖さを感じ、死して魂は山に帰ると考え、物を大切にして役に立った物を感謝をこめてカミに送り、人びとを敬い、祭りで結束を深め楽しみ、火に神聖さや水とともに清めの力を信じるなど、精神生活の多くも縄文時代に形成され、今日にいたるまで受け継がれてきた。日常生
活の原型は、縄文時代にその基本がすでに作られ継承されてきたのである」とは、考古学者• 岡村道夫さんの言葉。貝塚も、単なるゴミ捨て場ではなく、役割を終えたものを送る祈りの場所だったと考えられています。

 これらは、わたしたちが日々祈るときの気持ちと同じではないでしょうか。そして、忘れそうになっていることでもあります。縄文の祈りは、日本人が古来何を信じてきたのかを思い出させてくれるようです。


石鏃

さとびごころVOL.36 2019 winter掲載

文・阿南セイコ



後日の編集部挿入

麻と一言でいっても、種類によって植物としての科目が違っています。
衣類などに使われる「リネン(亜麻)」は、キントラノオ目アマ科
マットなで見かける「ジュート(黄麻)」は、アオイ目アオイ科、
奈良でも伝統産業として有名な奈良晒の「ラミー(苧麻・カラムシ)」は、イラクサ目 イラクサ科
です。
ここでの麻は、日本古来の麻「ヘンプ(大麻)」のことを指し、アサ科の植物です。

ヘンプは、縄文時代から利用されてきた日本古来のもの。戦後に栽培が制限されたことによって誤解や混同も見受けられますが、ただしい理解が定着し活用され再び広がることを編集部も願っています。


オンラインショップで「vol.36 特集 縄文の奈良」を購入
奈良の縄文遺跡を訪ね、縄文文化の価値について考えました。在庫が残り少なくなっていますが多くの方に読んでいただけたら幸いです。

さとびごころ連載

トチの実

三内丸山遺跡

山菜

日本の基層文化

縄文の奈良

縄文時代

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