そろそろ梅雨あけの知らせが届く頃となり、暑さも本番。豪雨かと思えば、酷暑。近頃の夏は熱帯性ですね。みなさま、いかがお過ごしでしょうか。
今月10日、さとびごころvol.58(2024 summer)を無事、発刊いたしました。
3ヶ月がとにかく早い!速い!今、ようやくほとんどの読者さまにお届けが終わろうとしています。HPの更新もしばらく止まってしまいました。(だいたい、更新が遅くなっているときは、わたくしが何かでアップアップしているときです笑)残りは、直接配達に行かせていただくところが残っています。いつも少しばらつきがあって、すみません。
表紙の写真は、室生深野の風景です。vol.57の「風は奈良から」でゲストにお招きした北森さんからいただき、あまりにも美しいので許可を得て使わせていただきました。人々が山村で生活を営み続けるために、森を開いて田んぼを作って水を管理して維持の手入れをして、少なくとも数百年をかけて作られてきた風景です。
日本中のどこにでもあった、こんな風景が次々と変わっていく時代なので、なおさらかけがえなく感じてしまいます。
特集のご紹介
特集 自然にも人にもやさしい川
自然も人も豊かになれる未来を探し求めるさとびごころ。
この夏は、川について取り上げ、
ひとつの事例として、自然に近い工法が採用された
下北山村の「魚道」改修に注目しました。
清流、地域の生業、釣り、おいしいもの、景観、…
いろんな角度からお読みいただければと思います。
景観と鮎の生態に配慮した魚道について、
現地下北山村からは、
村在住の北直紀さんに寄稿いただき、
また、設計者の立場から近自然河川研究所の有川崇さんに
プロジェクトを振り返っていただきました。
このお二人、それぞれ、鮎とあまごの釣りが大好き。やっぱり「好き」だから大切にできるんだと思います。本当は、その愛情がすべてなんだと編集部はそっと、思っています。でも現実化するには、技術も予算も必要です。自然にも人にもやさしいってなんだろう。みなさんも、川を通じて、ちょっとだけ妄想していただけたら嬉しいです。
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編集部あなんにとって、30年以上前に「自然に近づく」というアイデアと出会ったことは衝撃でした。技術のことは、河川設計の専門家ではないので詳しくはわかりません。が、原理原則として、人間は自然を壊すだけでなく近づくことも再生することも共存することもできるんだ!ということが、当時「開発=自然破壊=生態系やその土地の文化を消すこと」という絶望感の中に光明を感じさせてくれたのです。
その後、縄文時代に遡ってわたしたち日本の風土が産んだ文化の基本形を理解したとき、「ああ、もともとそうだったんだ。戦後しか知らないから、無自覚だったんだ」と思いました。
ほんとうは、ヨーロッパから逆輸入しなくても、失ってはいけないものを自覚できれば、シンプルな心でこれからの文化を作っていける。日本の歴史は、いつも海の向こう側からやってきたものと、もともとあったものが融合して進んできたと思います。入れ替わるのではなくて、融合してきた。消そうと思っても消せない何かがいつもあった。たとえば、漢字が入ってきても、ひらがなを開発してしまう、みたいな。
一神教にならず、人間も自然も物質も、魂を感じとって尊重してきたのがわたしたち。そのマインドをさとびでは「やさしさ」という言葉に込めています。これだけは消えてこなかったのに、とうとう消えかかっているのが今なんじゃないかなあ。
「自然にも人にもやさしい思想と取り組み」近自然と出会って感じたのも生きものへのやさしさと自然への謙虚さ。「言葉としてはわかるけど、どうしたらいいの?」さとびが探していることは、いつも「どうしたらいいの?」のヒントなんですよね。近自然川づくりもそのひとつ。
編集部のまわりには、そこのところを本能的に大事にされている方たちがいらっしゃる。そんな人たちとつながりながら、編集部も生活者の立場からその一部でありたいと思います。