さとびは日頃から企画編集の栄養になるような機会に遭遇すると、ともかく行ってみることにしています。今日は、そんなお話です。
さとび51号(2022autumn)で「炭はサーキュレーション」という特集をしました。あるものが、「もういらない」となったとき、そこからまた価値あるものとして循環していく、その結節点としての「炭」に注目したのです。
昔は、炭焼きという仕事は里山での生業のひとつでしたが、現在は一部を除いてほぼ消滅しています。さとびは、昔ながらの炭焼き文化の継承にも大変興味がありますが、この日訪ねたのは現代のニーズに合わせてあらゆる炭製品を製造する総合メーカーとしての炭工場です。
そんなメーカーが奈良(吉野郡大淀町)にあるのです。
奈良炭化工業株式会社。https://naratanka.com/
炭の活用法のすべてに対応?というほど、あらゆる場面で導入されています。BtoBの事業をされていますので、一般消費者であるさとびは、こんな会社の存在を知りませんでした。炭特集をつくるにあたり、リサーチしているときにHPを見つけていたのです。
ひとことでいうと、建物の下に埋炭するとか、農地の土壌改良とか、水の浄化とか、桁違いに大量の炭が必要だったら、どこに頼んだらいいの?というときに、この会社なんだと思います(HP内の導入実績をご覧ください)。
「有機農業で使ってOKの炭」という認証も取得なさっています。
社長の玉川さんが、釣り好きとわかり、うちの部員Mがもう、ニコニコしていました(きっと一緒に釣りにいかせてもうらう妄想をしていたに違いありません。もう体力に不安ありですけど?)。
(玉川社長)
玉川さんは、幼稚園まで大阪、小学1年性のときに初代のお父さんが工場を開いたこの地へ転居されました。聞くとですね、なんと奈良の林業家としてさとびともご縁のあるO様ともお知り合いとわかり、シンパシーランプが点滅しまくりました。
若いときの玉川さん、ハンサムです!(となりの美しい人は女優さんか誰かだそうですけどお名前わかりません!)
かつては、レーヨンをつくるために必要な炭を製造することがメインでした。しかし時代の変化にともなって、納入先の大手メーカーさんから「いずれは…(購入しなくなる時がくる)」というお話があったそうです。ある日突然、「もう切るよ」ではなくて、取引先への配慮が感じられる大手さん。昭和には、こんな側面もあったのですね。今の日本は冷たくなったなあ。。。。(と、話がずれましたね)
そこから、多様なニーズに対応する炭の総合メーカーへと変化されてきました。燃料用、農業土壌改良、木酢液、忌避剤、畜産水産用、融雪用、園芸用、竹炭パウダー、床下調湿木炭、炭素埋設用木炭、水質用、、、 HPのサイドメニューを見ていただくと、よくわかります。
製造する炭のタイプによって釜も異なるそうです。さすがは炭のことならなんでもお見通し。ある京都の炭火焼きのお店に行かれたとき、「備長炭」と高らかに謳っているそのお店の炭を見て「ん?」となり、「ちょっと箱見せて」と調べてみるとれっきとした備長炭とは言えないものだったことがありました。備長炭の定義が法律でさだめられていないため、あいまいな使われ方もしているようですね。
同社の炭の主な原料はおがくず。おがくずを熱で固めてオガライトにし、それを炭化して炭を製造されているそうです。奈良で林業が盛んだったころには、少しトラックを走らせれば周辺の市町村からおがくずを仕入れることができましたが、近年はそうもいかず、県外からも、また海外へ出かけて原料となる木材のこと、森づくりのことを指導しながら輸入するということもされているそうです。
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ここからは、すこしコアなお話になりますので、興味がない方はスルーしてくださいね。
さとびは昔からカタカムナを解読された楢崎皐月(1899ー1974)さんという科学者に興味があり、『静電三法」という文系脳には難読な本をちまちま、ちまちま、おりをみては読み解いています。三法の中には農法もあり、これが畑活を研究するうえでも興味しんしんの内容となっています。(農法のみならず、広い意味でマイナスの電気が大事、何かある、と思っていることからも興味が湧きます)
静電三法は、シーエムシー技術開発株式会社の発行による自主出版本で、アマゾンでは14880円ですけども、発行元から購入すると定価6380円です。(今なら割引あるそうですよ)
そして、玉川社長から驚きの事実を聞きました。
楢崎氏と縁のある人たちからのオーダーをたくさん受注されてきたそうです。どうりで同社のHPには「炭素埋設用木炭で優勢地帯(イヤシロチ)に」というページがあるわけです。
「ああ、なんだか繋がった。こちらに来れてよかった」
心の中に風が吹くような思いがしました。
初対面で、あまり食いついてしまっても社長のお時間を頂きすぎて失礼かと思い(いや、すでに十分いただいてます)、我に帰るわたし。
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今回は、ごあいさつと、畑活で使いたい炭を購入させていただき、いつかまた取材させてくださいというお願いをして帰ってきました。
炭がいかに価値あるものか。まだまだ理解は少ないように思います。同社からは白い蒸気と煙がたちのぼり、煙が好きなわたしはある種、風情があると思いますが、あとから開発された住宅が増えてきており苦情になるため、そのあたりは気を使われているとのことでした。
そこで野焼きのことが思い出されてきます。農地で籾殻を野焼きすることは許される行為ですが、周辺からの苦情がくるため、実際にはできないという農家さんの声をよく聞きます。「有害物質を燃やしているわけではなく、籾殻なんだから、あれはいいんだよ。籾殻くん炭は、すごくいいんだよ」という認識が常識になってほしいなあ。。。
炭のたいせつさを伝えられるよう、いつかまた炭の記事をつくりたいなと思いました。(今は頭の中が散らかりっぱなしです笑)
前回の特集では、「専門知識がなくても、広い場所がなくても、いろんなものを元に誰でも炭作りできる」部分にフォーカスしました。今回訪ねた奈良炭化工業さんでは、総合メーカ一としてあらゆる用途に対応する炭の製造について教えてもらいました。自分で炭づくりできない方、まとまった量の炭が必要な機関には、救世主的なメーカーさんかもしれませんね。
最後に、今回購入した炭のご紹介を。小売はなさっておりませんので、ご厚意で購入させていただきました。
「配達はしないけど、取りに来てくれるんなら売るよー」との一言が、わたしの耳に刻印されていますけどー。
【広葉樹・針葉樹炭】
みのり炭素25リットル(粒)
畑活で、使ってみます!!
さとびごころ vol.51(2022.autumn)
特集 炭はサーキュレーション