この記事はさとびごころVOL.39 2019 autumnよりの転載となります。内容は掲載当時のものです。
こんにちは。早いものでこのコラムも書かせて頂いて4 回目。第1回お湯シャン、第2回手前味噌、第3回ぬか床ときて、やはりこれを語らせてほしい愛菌家みなみの存在目的=「菌からはじまるワールドピース(世界平和)」。わたしは、世界が平和で調和していて、みんながしあわせに暮らせる場であってほしいと本当に思うし、それが子孫の代まで続いてほしい。そのための愛菌家活動なのです。
自然界における菌(微生物)の世界に目をやると、そこには多様性や循環、調和がよく見てとれます。無数に存在する目には見えない彼らが物質を分解し、それを動植物が利用し、その排泄物や亡骸をまた微生物が分解する。その営みはもちろん人間の体内外にも存在し、人体常在菌(人間と共生関係にある菌)の活躍無しに、わたしたちは食べ物をうまく消化することも免疫機能を正常に働かせることもできません。菌たち無しではわたしたちは存在し得ないのです。彼らは注目もされずに(たまに除菌殺菌などされながら)毎日24時間365 日わたしたちに寄り添い、せっせと働いてくれています。これを愛と呼ばずして何と呼ぶのでしょう。「菌=愛」と認識すると、この世界は何と愛で溢れていることでしょうか。
「世界平和」に反対する人は多分いません。でも多くの人にとっては「話が大き過ぎて自分には関係ない(無視)」か、「どうせ自分ひとりじゃ何も変えられない(絶望)」と思ってしまうから、まだこれが実現できずにいるのでしょう。実際、道のりは険しく、解決しなければならない問題は山積みですが、何よりの問題は「自分ごと」として考えられないこと。他を気遣うには自分自身に余裕がなければできません。余裕があるとはつまり今の状態に満足し、しあわせを感じているということ。この余裕がないから大きな問題を前に無視か絶望しか出てこない。しかし、こんなに物が溢れ、物質的に豊かな社会になったのに、人々はまだまだ満足できずに何を探し求めているのでしょうか。答えは外に求めてもありません。ではどこに意識を向けたらいいのか。もちろん自分自身です。自分は独りではない。菌たちがこんなにも働いてくれていて、自分もその調和の輪の中に入っていること、そしてこれが世界のすべてのものの上に平等に起きていることに一人ひとりが気付けば…。そこには今までずっとそこにあった、そして誰にも奪われることのない愛に満ちた世界があります。生態系の一員としての安心感があります。
個人が菌の存在を通して「今、ここにあるしあわせ」に気づくことが、世界平和への近道であると、わたしは思います。
さとびごころVOL.39 2019 autumn掲載
文・渡部みなみ
東京農業大学短大醸造学科出身。ライフワークとして「発酵ワークショップ」を随時開催。