さとびは、行政には直接縁がなく、取材歴の中で、村長さんのインタビュー記事はあります(あなん担当ではありませんでしたが)が、町長さんはないのです。今回は、さともだち兼さとびサポーターさまからのお知らせをうけて、平成元年うまれ、まさにうちの長男と同世代の若者、奈良県田原本町の高江啓史町長の講演を聞いてきました。
高江さんの記事は奈良新聞のウェブサイトで公開されています。
「幸せを感じるまちに」 高江啓史候補(34)=無新= – 田原本町長選(2024,1,17)
奈良県田原本町長に就任した高江啓史さん(35) – ときの人
高江さんのプロフィール等は上記リンク先をご覧ください。(11月22日現在、読めます)また、町の方針についても上記記事のなかにまとめられています。
ただ、このような記事だけを読んでも、わたしのような心の擦れた?大人は、「口ではなんとでも言えちゃう」現実も見てきていますので、はやり、ライブでお聞きしないとわからない!と、大変興味を持ったのです。
高江町長が生まれたのは、「失われた30年」と呼ばれることになる平成元年。県外出身(愛媛県)。高度経済成長も、バブル景気も、「歴史」となった時代に育った人は、人口減と財政難をはじめとする課題を抱えた地方自治体のビジョンをどのように描いていらっしゃるのか。それは、さとびの取材活動をするうえで、きっと学びになるだろうと思いましたので、行ってきました。
このセミナーでは、町の政策等の具体的なことは主に配布資料にまかせ、その背景にある考え方を中心にお話されていました。その中で、印象に残ったポイントは、「制度や補助金よりも地域を作るのは人なんだ」という考え方。こちらは、前職の森章浩元町長の方針をひきついでおられるようですが、副町長としてともに推進してこられたはずで、熱がこもっていました。
さとびも、「地球を思うなら地域から 世界を変えるなら自分から」というフレーズをよくつかいます。地域や社会など、ひとつに的をしぼれない対象がもつ課題(さとびでいうなら人が自然から離れすぎてしまったことで起こるさまざまなこと)に、何かいい変化を生んでいきたいと思うなら、強制ではなく人が自ら望んで「そうしたい」「そうありたい」という思いから振るまわない限り、変化にはならない(続かない)と思うんです。ひとりひとりの人。その思いが集まったものが地域。
そこで田原本町では、なんと
くじびき民主主義
というものを行っておられるそうです。よくあるタウンミーティングとは違うようです。トップと住民との対話ではなく、「自分ごと化」してもらいたいと、無作為に選んだ(くじびき?)1000人の住民に町からは情報を開示して、どうしたらいいか現実をふまえて考えてもらうようにしているそうです。
部分的な情報だけだったら、無関心か、それとも自分たちの損得をもとに考えてしまいがち。でも、町全体の課題として「自分ごと化」してもらうと、町が出している結論と同じ結果になったりするそうです。
行政が決めたことって、「なぜそうなったのか。そうせざるをえない理由はなんだったのか」についてフェアな情報や、掘り下げた情報は少ないと感じます。とかく、公式発表、以上。そんな感じが多くないですか。そして「人間インターネット」(口コミ、うわさ)が同時に広まり、何が本当なのかわからなくなる。。。。あるある。
さとびも、「自然にも人にもやさしいとは何か?」を読者のみなさんに自分ごと化していただくために、どんな記事を企画していったらいいか、いつも模索しています…。
また、「通り過ぎる町から選ばれる町へ」ということも目指しておられるとのこと。たしかに!田原本町って、なんとなく特徴が少なくて通り過ぎてしまいがち!
あなん的には、唐子・鍵考古学ミュージアムを見てから、マイ注目スポットになりました。道の駅では、美味しい野菜が買えます。そういえば、奈良クラブが関西リーグだったころ、応援のためによく通ったフットボールセンターも田原本。大地の再生特集のときに紹介した鏡作神社も田原本。農がつなげる人と土特集で取材させていただいた多集落営農組合も田原本。小さな酒屋の連載で紹介した酒のあべたやさんも田原本。
けっこう田原本に通っていたのですよねー。でも、行政の面から勉強させていただいたのは初めてです。いつもは自然に近い山村を取材することが多いのですが、これからは奈良盆地のどまんなか、田原本町についてもより理解を深めていきたいと思った次第でございます。
なお、この勉強会は、森本元町長が理事長をされている「一般社団法人みらい政策研究所」さまの主催でした。場違いなところにノコノコでかけていきましたのに、高江さま、森さま、お二方ともにこやかにごあいさつさせてくださり、ありがとうございました。(ツーショット写真などはお願いできない性格のあなんでございました。惜しかった!)
記事のおわりに、せっかくなので関連するさとびバックナンバーをご紹介するようにしているのですけど、「どれだったっけー」と調べるのは、わりと時間がかかります。まして、読者の方なら、全然忘れてしまわれているのではと思います。「こんな話、どこかに載っていたかなあ」と思われましたら適宜キーワードを入力してサイト内で検索してみていただくと、なつかしい記事が見つかるかもです。最近の特集を一覧されたい場合はオンラインショップをご覧いただくとわかりやすいと思います。また、「こんな話、載ってませんか」とご相談いただけましたら、おすすめの号をご紹介しますよ。
さて、関連するバックナンバーです。
さとびごころ vol.54(2023.summer)特集 奈良でじわじわ大地の再生
さとびごころ vol.35(2018 autumn) 特集 農がつなぐ人と土
奈良の時酒と小さな酒屋の物語 連載 酒のあべたや 掲載号
さとびごころ vol.47 (2021.autumn) 特集 いつまでも豊かな森
さとびごころは来年2026年から、新刊700円、バックナンバー800円となります。年内は旧価格でお求めいただけますので、購入ご検討の方はぜひ。